江戸時代から語り継がれる日本の代表的な怪談話です。鶴屋南北の傑作歌舞伎『東海道四谷怪談』、皿を数えるお菊の亡霊で知られる『番町皿屋敷』、カランコロンと下駄の音を響かせて現れる『牡丹燈籠』の三つを指します。いずれも愛憎や嫉妬、怨念が渦巻く悲劇的な物語です。
A.三つとも江戸時代に形づくられた物語です。「東海道四谷怪談」は1825年(文政8年)に四代目鶴屋南北が書き下ろしました。皿屋敷は江戸時代に成立し、牡丹燈籠は1666年(寛文6年)の「伽婢子」を原典に、1861年(文久元年)ごろ三遊亭圓朝が練り上げました。
A.お岩のモデルには諸説あり、田宮家の娘「於岩」を実在の人物とする説が有力です。於岩は1636年(寛永13年)に世を去ったと伝えられます。一方で、於岩は夫婦仲が良かったという説もあり、怪談とはまるで違う実像が浮かび上がります。
A.舞台が違います。播州皿屋敷は兵庫県姫路市の姫路城を、番町皿屋敷は江戸の旗本屋敷を舞台としています。悪役も播州版は青山鉄山、江戸版は旗本の青山播磨ですが、権力者の理不尽な仕打ちとその報いという構造は共通しています。
A.四谷怪談は東京都新宿区の於岩稲荷田宮神社と於岩稲荷陽運寺が知られています。皿屋敷は姫路城の上山里曲輪に「お菊井戸」が、東京の千代田区に「帯坂」が残ります。牡丹燈籠は根津や谷中の周辺が舞台とされ、圓朝の墓は台東区谷中の全生庵にあります。
A.牡丹燈籠の速記本は、言文一致体の成立を後押ししました。1884年(明治17年)に三遊亭圓朝の高座の語りがそのまま速記されて出版され、日本初の速記本として評判を呼びました。その話し言葉のままの文章は、二葉亭四迷ら明治の文学者に影響を与えました。