【概要】
塔之沢温泉は、箱根湯本から早川をさかのぼった深い渓谷に、老舗の旅館が肩を寄せ合うように並ぶ温泉地です。江戸時代の初めに阿弥陀寺を開いた弾誓上人が見つけたと伝えられ、七湯のなかでは新しく生まれた湯治場でした。大正期の木造の建物を残す旅館が国の登録有形文化財になっており、川音に包まれた静かなたたずまいが、すぐ下流の湯本のにぎわいとは趣の異なる魅力になっています。
【歴史】
塔之沢温泉は、慶長10年(1605年)ごろに塔ノ峰の阿弥陀寺を開いた木食僧の弾誓上人が、早川の流れのほとりで湯を見いだしたのが始まりとされます。発見の年は慶長9年とする説もあります。開かれてから百年もたたないうちに、元湯をはじめ十を超える湯つぼを数える湯治場に育ち、湯本や底倉など古くからの湯とならんで箱根七湯の一つに数えられるようになりました。
【特徴】
塔之沢温泉の湯は無色透明のアルカリ性単純温泉が中心で、湯本と同じくやわらかな肌ざわりです。早川が深く刻んだ谷の両岸に旅館が張りつくように建ち、窓の下を渓流が流れる宿が多いのが特徴です。大正期に建てられた木造の旅館の建物が国の登録有形文化財に登録されており、明治や大正の湯治場の面影を伝える古い宿の造りを外から眺めるだけでも見応えがあります。
【見どころ】
新緑と紅葉の季節には、早川の渓谷が淡い緑や朱色に染まり、旅館の窓や橋の上から渓谷美を楽しめます。坂道を上った先にある阿弥陀寺は、塔之沢の湯を開いた弾誓上人ゆかりの寺で、境内は初夏にあじさいが咲く寺としても親しまれています。箱根登山電車の塔ノ沢駅は二つのトンネルにはさまれた小さな駅で、ホームの脇には銭洗弁天がまつられています。
【トリビア】
幕末に第14代将軍の徳川家茂に嫁いだ皇女和宮は、明治時代の初めに脚気の療養のため塔之沢に滞在し、そのままこの地で生涯を閉じました。阿弥陀寺には和宮の位牌がまつられ、ゆかりの寺として知られています。温泉地の名は塔之沢と書くのが一般的ですが、箱根登山鉄道の駅名は塔ノ沢と書き、地図や案内でも二つの書き方が混在しています。
