【概要】
宮ノ下温泉は、早川の渓谷を見下ろす斜面に開けた温泉地で、明治11年(1878年)に創業した富士屋ホテルの地として知られます。室町時代に湯が見つかったと伝えられ、江戸時代には箱根七湯の一つでした。横浜の開港を機に外国人の避暑地としてにぎわい、国道沿いには骨董品やみやげ物を外国人に売る店が並びました。いまもクラシックホテルと昭和の面影を残す商店街が、ほかの六湯にはない洋風の空気を漂わせています。
【歴史】
宮ノ下温泉は、応永5年(1398年)に自然に湧く湯が見つかったのが始まりと伝えられ、熊野神社のお宮の下に開けたことが地名の由来とされます。江戸時代には箱根七湯の一つとして藤屋や奈良屋などの湯宿が並びました。明治11年(1878年)、山口仙之助が藤屋を買い取って改築し、富士屋ホテルを開業すると、宮ノ下は外国人客を迎える国際的な温泉地へと姿を変えていきました。
【特徴】
宮ノ下温泉は早川の谷を見下ろす尾根の中腹にあり、温泉場としては湯よりも眺めと洋風の街並みで知られてきました。富士屋ホテルは明治24年(1891年)に建てられた本館をはじめ、寺院を思わせる唐破風の屋根に洋風の内装を合わせた建物が並び、日本のクラシックホテルの代表とされています。大規模な改修を経て、2020年に営業を再開しました。
【見どころ】
富士屋ホテルの前から延びる国道沿いの商店街には、古くから続く骨董店や写真館、古い洋館を生かしたカフェなどが点在し、坂道を歩きながら古い温泉町の看板や建物を眺める散策が楽しめます。宮ノ下駅から少し下れば、早川の谷底にある堂ヶ島の渓谷遊歩道の入口へも向かえます。富士屋ホテル別館の菊華荘は、皇室の御用邸として建てられた純和風の建物です。
【トリビア】
富士屋ホテルの創業者の山口仙之助は、慶應義塾で福澤諭吉から国際観光の大切さを説かれてホテルを開いたと伝えられます。明治16年(1883年)の宮ノ下の大火では、創業以来の建物と記録の多くを失いました。その後、明治22年に町村制が敷かれると、山口は宮ノ下をふくむ温泉村の村長にも就き、ホテル経営だけでなく塔之沢から宮ノ下へ通じる道路の整備にも力を注いだとされています。
