【概要】
箱根堂ヶ島温泉は、宮ノ下の集落から早川の渓谷を深く下った谷底に湧く温泉です。南北朝時代の高僧、夢窓疎石が開いたと伝えられ、江戸時代には箱根七湯の一つとして数軒の湯宿が並びました。昭和から平成にかけては専用のケーブルカーで下る二軒の旅館が営業していましたが、2013年8月にそろって営業を終え、現在は泊まれる宿がありません。渓谷沿いの遊歩道から往時の面影をしのぶことができます。
【歴史】
箱根堂ヶ島温泉は、後醍醐天皇や足利尊氏が帰依した臨済宗の高僧、夢窓疎石(夢窓国師)が開いたと伝えられています。国師がこの谷に結んだ庵にちなんで、堂ヶ島と呼ばれるようになったともいわれます。江戸時代には大和屋や奈良屋など五軒の宿が並び、明治には三軒、昭和から平成にかけては対星館と晴遊閣大和屋ホテルの二軒が営業を続けていました。
【特徴】
箱根堂ヶ島温泉は、宮ノ下の崖の下を流れる早川の谷底にあり、国道から歩いて下りるには急な坂道を延々とたどらなければなりません。このため二軒の旅館はそれぞれ専用のケーブルカーやロープウェイを備え、宿泊客を谷底まで運んでいました。2013年8月に二軒ともに営業を終え、再開を目指すという告知も出されましたが、いまも湯に浸かれる宿はなく、谷は静けさに包まれています。
【見どころ】
堂ヶ島から早川の上流に向かって木賀温泉まで続く渓谷遊歩道は、深い谷の底を歩く三十分から四十分ほどの道で、木々に覆われた渓流の眺めが続きます。道の途中には夢窓国師が閑居したと伝わる場所に石碑と小さな庵が建てられています。紅葉の時期は特に美しい一方、急な坂や足元の悪い場所もあるため、通行できるかどうかを事前に確かめてから訪ねると安心です。
【トリビア】
歌川広重の「箱根七湯図会」には、嘉永5年(1852年)に描かれた堂ヶ島の図があり、早川の岸の湯宿と、対岸の明星ヶ岳から落ちる滝が描き込まれています。旅館の対星館という名は、夢窓国師が夜空の星に向かって坐禅を組んだという言い伝えに由来するとされます。松本清張の推理小説『蒼い描点』に登場する谷底の宿は、この対星館がモデルともいわれています。
