【概要】
那須湯本温泉は、茶臼岳の南東の麓に広がる那須温泉郷の中心の湯です。手負いの白い鹿が傷を癒していたのを狩人が見つけたという開湯伝説をもち、その名を受け継ぐ共同浴場の鹿の湯が今も湯けむりを上げています。白く濁る硫黄の湯と、九尾の狐の伝説が残る殺生石、那須与一ゆかりの那須温泉神社がひとつの温泉街に集まっています。
【歴史】
伝承では、舒明天皇の時代にあたる630年ごろ、狩野三郎行広という狩人が白い鹿を追って山に入り、湯に浸かって傷を癒す鹿の姿から温泉を見つけたとされます。738年には奈良の正倉院に伝わる文書に那須の湯の記録が現れ、伝説とは別に史料でも古さが確かめられます。発見の折に建てられたと伝わる那須温泉神社は、平家物語で那須与一が祈った那須温泉大明神とされています。
【特徴】
那須湯本温泉の湯は単純酸性硫黄泉で、白く濁った湯から硫黄の香りが強く立ちのぼります。鹿の湯では41度から48度まで温度の違う湯船が並び、男湯には6つ、48度の湯船がない女湯には5つあります。湯の成分が濃いため、ぬるい湯船から順に短い時間ずつ入るのがよいとされ、石けんやシャンプーは使えません。昔ながらの湯治場の作法が、いまも浴舎のなかに息づいています。
【見どころ】
温泉街の奥には、硫化水素のガスが漂う荒れ地に大きな岩が横たわる殺生石があり、九尾の狐が化けた石という伝説と松尾芭蕉の句碑が訪れる人を迎えます。そのすぐ上の石段を登れば那須温泉神社の社殿に出られ、湯めぐりの合間に参拝できます。鹿の湯の木造の浴舎や、湯本の坂道に並ぶ宿の屋根から上がる湯けむりを眺めながら歩くと、古い湯の町の空気が感じられます。
【トリビア】
鹿の湯には、湯船に入る前にひしゃくで湯をすくって頭からかぶる「かぶり湯」という習わしがあります。のぼせや湯あたりを防ぐためのもので、大人は200回ほどかぶるのが目安と紹介されることもあります。七湯の呼び名が生まれた江戸時代から、那須湯本温泉は顔ぶれが変わっても必ず数えられてきた湯で、温泉郷の元湯として各地の湯めぐりの起点になっています。
