【概要】
在原業平は、天長2年(825年)に平城天皇の皇子である阿保親王の子として生まれた平安時代前期の歌人です。在原の姓を賜って臣籍に下り、在五中将とも呼ばれました。『伊勢物語』の主人公の「男」は業平がモデルとされます。京都府京都市西京区にある十輪寺は業平が晩年を過ごしたと伝わる寺で、なりひら寺の名で親しまれています。
【歴史】
在原業平は、父の阿保親王が平城天皇の皇子、母の伊都内親王が桓武天皇の皇女という高い血筋に生まれました。天長3年(826年)に兄の行平らとともに在原の姓を賜り、臣籍に下っています。官人としては右近衛権中将や蔵人頭を務め、元慶4年(880年)に亡くなりました。のちに清和天皇の后となる藤原高子との恋の物語は、『伊勢物語』の名場面として知られます。
【特徴】
紀貫之は仮名序で業平の歌を「その心余りて言葉足らず」と評し、しぼんだ花が色を失っても香りだけを残しているようだとたとえました。思いがあふれて言葉が追いつかないほどの情熱が持ち味です。百人一首には「ちはやぶる神代も聞かず竜田川からくれなゐに水くくるとは」が選ばれ、竜田川の紅葉が川の水を絞り染めにしたかのようだと詠んでいます。
【見どころ】
京都府京都市西京区にある十輪寺は、西山のふもとの大原野に建つ天台宗の寺で、安産や子授けの祈願でも知られます。境内には業平の墓と伝わる宝篋印塔や、業平が塩を焼いたという塩竈の跡が残ります。本堂の前で枝を広げる枝垂れ桜はなりひら桜と呼ばれ、春には淡い紅色の花が境内を包みます。開花の時期は年によって前後するため、訪れる前に確かめると安心です。
【トリビア】
業平は大原野神社に参詣した藤原高子をしのび、十輪寺で塩を焼いて陸奥の塩竈の浦を思わせる煙を立ちのぼらせたという伝説があります。十輪寺では、業平の命日とされる5月28日に業平忌の法要が営まれてきました。また、かきつばたの五文字を各句の頭に置いた「から衣きつつなれにし」の歌も業平の作で、折句の名作として今も教科書に載っています。
