【概要】
湯殿山は標高1500メートル、月山の南西に連なるなだらかな山で、出羽三山の奥宮とされる湯殿山神社本宮が中腹に鎮まります。本殿も拝殿も持たず、温泉が湧き出す赤褐色の巨岩そのものを御神体として拝む、古い自然崇拝の姿を今にとどめる神域です。生まれかわりを祈る「未来の山」として三山巡りの締めくくりになります。
【歴史】
湯殿山神社は大山祇神などを祭神とし、羽黒山や月山と同じく蜂子皇子の開山と伝えられます。江戸時代には行の山として全国から修験者や参詣者を集め、山形県鶴岡市の大日坊や注連寺には、湯殿山信仰を支えた真如海上人らの即身仏が今も安置されています。元禄二年には松尾芭蕉も月山から尾根を下ってこの山へ参拝しました。
【特徴】
湯殿山の最も大きな特徴は、本殿や拝殿といった建物を構えず、御神体そのものに向かって拝むという点です。参拝には作法があり、土足は厳禁で履物を脱いで素足になり、紙の人形代で禊を受けてからでなければ御神体に近づけません。古来より「語るなかれ、聞くなかれ」と伝えられ、御神体の写真撮影も固く禁じられています。
【見どころ】
三山の奥宮とされる鶴岡市田麦俣の本宮へは、湯殿山有料道路の終点にある仙人沢に車を置き、参拝バスか徒歩で谷を上がっていきます。御神体は湯が湧き出す大きな岩で、参拝者はその温かい岩肌を素足で踏みながら拝礼します。開山は六月一日で、雪が降り始める十一月上旬には閉ざされるため、参拝できるのは夏から秋の間に限られます。
【トリビア】
見たものを語ってはならないという戒めは古くから守られ、松尾芭蕉も湯殿山について詠むことをはばかり、「語られぬ湯殿にぬらす袂かな」という一句だけを書き留めました。三山それぞれの御縁年のうち湯殿山は丑歳にあたり、出羽三山全体としての御縁年も丑年とされます。参籠所では山の恵みを使った精進料理を味わうこともできます。




