【概要】
魚崎郷は兵庫県神戸市東灘区にある魚崎・本庄の一帯を占める郷で、灘五郷のほぼ中央に当たります。文政11年(1828年)に上灘郷が三つに分かれたときの東組がもとになり、寛永2年(1625年)に始まる櫻正宗が本拠を置きます。宮水の発見につながった蔵がある土地で、見学できる酒蔵や記念館が浜沿いに点在し、灘の酒を訪ね歩く拠点になっています。
【歴史】
魚崎郷のもとになったのは、文政11年(1828年)に上灘郷が三つに分かれたときの上灘東組です。魚崎を中心とする蔵が一つのまとまりとなり、のちに魚崎郷と呼ばれるようになりました。櫻正宗は寛永2年(1625年)に現在の伊丹市域で創醸し、享保2年(1717年)に魚崎へ移って酒造を専業としています。昭和25年(1950年)には魚崎町と本庄村が神戸市に編入され、今の区域が形づくられました。
【特徴】
魚崎郷は浜に沿って蔵が連なる立地を生かし、樽廻船による江戸積みで伸びた郷です。仕込み水には西宮から運ぶ宮水を用い、六甲山地から吹き下ろす寒風のもとで丹波杜氏が寒造りを担ってきました。現在は櫻正宗のほか、太田酒造や宝酒造、浜福鶴銘醸などが灘五郷酒造組合に加わっており、全国規模の大手と中小の蔵が入りまじる構成になっているのが特徴です。
【見どころ】
魚崎郷では酒蔵を訪ね歩く楽しみがあります。櫻正宗記念館「櫻宴」は阪神・淡路大震災を経て、正宗という酒名の発祥を後世に伝えるために設けられた施設で、酒造道具や古い看板、昔の醸造を記録した映像を展示しています。震災で大きな被害を受けた福鶴の蔵は、1996年にガラス越しに醸造の工程を見られる浜福鶴吟醸工房として再出発しました。見学の条件は変わります。
【トリビア】
「正宗」という酒名の元祖は魚崎郷の櫻正宗だとされます。六代目山邑太左衛門が経典にあった「臨済正宗」の語から名を採り、「せいしゅう」の音が清酒に通じることから付けたと伝えられ、のちに全国の蔵がこれにならって正宗を名乗りました。同じ当主が西宮と魚崎の酒質の違いから宮水を突きとめており、魚崎郷は灘の酒の性格を決めた発見の舞台でもあります。




