【概要】
土湯こけしは福島県福島市の土湯温泉郷に伝わる伝統こけしで、江戸時代末期に定住した木地師が農閑期の副業として作ったのが始まりです。頭頂の黒い蛇の目模様(カセ)、細い三日月形の目、ろくろを高速回転させて描く色鮮やかな横縞の「ロクロ線」が特徴で、山深い環境ゆえに独自の様式が守られてきました。首を回すと「キィキィ」と鳴きます。
【歴史】
福島県福島市の土湯(つちゆ)温泉郷で伝承されている「土湯こけし」は、江戸時代末期にこの地を訪れた木地師たちが定住し、農閑期の副業として玩具を作ったのが始まりとされています。山深い温泉地帯である土湯は、独特の閉鎖的な環境であったため、他の産地の技法に影響されることなく、長く独自の形式や模様が守り抜かれてきました。そのため、非常に個性的で素朴な味わいを持つこけしとして発展しました。
【特徴】
土湯こけしの最も象徴的な特徴は、頭のてっぺんに描かれた黒い蛇の目模様(通称:ジャノメやカセ)です。これはもともとろくろを回す際の軸跡を隠すための装飾だったと言われています。目は細い三日月形で、小さなおちょぼ口の少し寂しげで素朴な表情が印象的です。胴体は細身で、ろくろの回転を活かして描かれる「ロクロ線」という色あざやかな横縞模様が全体に施されており、シンプルながらもモダンな美しさがあります。
【見どころ】
土湯温泉の入口にある早乙女橋のたもとには、こけしをかたどったモニュメントが立ち、夜には柔らかな明かりがともって訪れる人を出迎えます。温泉街には昔ながらの佇まいを残すこけし工房が点在しており、職人のろくろの音を聞きながら散策するのも土湯ならではの楽しみ方です。福島市の観光交流センター「湯愛舞台」では東北六県のこけし約2,000本が展示され、絵付け体験も実施されています。
【トリビア】
土湯こけしの胴体に描かれている、赤・緑・黄・紫などの鮮やかな「ロクロ線」は、こけしをろくろで高速回転させながら、染料を含ませた筆を当てることで描かれます。この熟練の勘と絶妙な力加減が必要とされる技法により、滲みのない美しく均一な縞模様が生まれます。また、頭を胴体にはめ込む際にも摩擦熱を利用する高度な木地技術が使われており、首を回すと「キィキィ」と鳴くのも土湯こけしの面白い特徴の一つです。
