【概要】
兵庫県宝塚市の山本地区は、平安時代から続くとされる日本最古の植木産地の一つ。特に「接ぎ木」の技術発祥の地として知られ、豊臣秀吉から木接太夫の称号を授かった伝承がある。高度な園芸技術を誇り、現在は園芸流通の拠点としても機能している。
【歴史】
兵庫県宝塚市山本の園芸は平安期に始まると伝えられ、千年におよぶ歴史を持つとされます。この地の名を高めたのは接ぎ木の技でした。安土桃山期にここで暮らした坂上頼泰は、武士から町人となって山本善太夫を名乗り、晩年に園芸へ没頭するなかで接ぎ木の法を編み出したといいます。文禄2年、その評判を聞いた豊臣秀吉が大坂城で頼泰に会い、技に感嘆して木接太夫の称号を与えたと伝わります。
【特徴】
接ぎ木の技術は松や梅、つつじの生産を支え、宝塚市山本と隣接する長尾の一帯を園芸の一大産地へと押し上げました。仕立てのよい庭木や盆栽、鉢物を送り出す生産者が今も軒を連ね、阪急電鉄の山本駅の周辺には植木店や園芸店が数多く集まっています。苗木の産地であると同時に流通と情報の拠点でもあり、家庭園芸の需要に応える品ぞろえの豊かさで知られ、全国から仕入れに訪れる同業者も少なくありません。
【見どころ】
地域の中心にあるのが、2000年4月に開いた宝塚市立宝塚園芸振興センター「あいあいパーク」です。英国サリー地方の17世紀の街並みを模した建物に、グリーンショップや見本庭園、園芸教室、ライブラリーカフェが収まっています。花や苗を選ぶだけでなく庭づくりの相談もでき、焼きたてのパンを片手に緑を眺めてゆっくり過ごす人の姿も多く見られます。季節ごとの催しも開かれ、休日は家族連れで賑わいます。
【トリビア】
木接太夫を顕彰する彰徳碑は1912年に建てられ、現在も地域の誇りとして大切に守られています。坂上頼泰は2017年、宝塚市の特別名誉市民に選ばれました。四百年以上前の一人の園芸家の工夫が、現代の街の性格までも決めているわけです。春と秋にはオープンガーデンが催され、丹精を込めた個人の庭や生産者の圃場が一般に公開され、この地の園芸文化を身近に感じられる機会として多くの愛好家が訪れます。




