【概要】
紀州備長炭は、和歌山県のみなべ町・田辺市周辺で生産される備長炭の元祖。「備中屋長左衛門」の名に由来する。ウバメガシを原木とし、非常に硬く、断面には金属的な光沢がある。火力、火持ちともに最高品質とされ、高級料亭などで愛用されている。
【歴史】
紀州備長炭は、ウバメガシやカシを原木として和歌山県田辺市にある山あいの集落や、隣接するみなべ町などで焼かれてきた最高級の白炭です。紀南の山では中世から製炭が営まれていましたが、江戸時代の元禄年間に製法の改良が進み、現在に近い品質が整いました。当時、田辺の炭問屋であった備中屋長左衛門が、自らの屋号を冠した名で江戸へ盛んに出荷したことが、「備長炭」という呼び名の起こりであると伝わります。
【特徴】
備長炭は、窯の中で炭化させた材を高温のまま外へ掻き出し、灰と土を混ぜた消し粉をかけて一気に冷ます「白炭」の製法で作られます。こうして締まった紀州備長炭は非常に硬く、打ち合わせると金属のような澄んだ音が響き、断面には黒い光沢が現れます。火付きは決してよくありませんが、いったん着火すれば長時間にわたり安定した強い火力を保ち、煙や匂いをほとんど出しません。
【見どころ】
備長炭発祥の地とされる田辺市秋津川には紀州備長炭記念公園があり、実物の炭窯や製炭道具の展示を通して、炭焼きという仕事の全体像を知ることができます。風鈴づくりなど、炭を使った体験のメニューも用意されています。窯出しの現場では、真っ赤に焼けた炭を長い道具で手際よく引き出す作業が続き、炎の色だけで焼き加減を見極める炭焼き職人の熟練の技を間近に感じられます。
【トリビア】
紀州備長炭の製炭技術は昭和49年(1974年)に和歌山県の無形民俗文化財へ指定され、原木林をすべて伐らずに残す択伐の技術とともに受け継がれてきました。備長炭は多孔質で吸着力が高いため、燃料以外にも水の浄化や消臭、除湿の用途で使われます。鰻や焼き鳥の店が「紀州備長炭使用」と掲げることが一種の看板になるほど、産地の名はそのまま品質の証として受け止められています。




