【概要】
称名晩鐘は、称名寺の鐘楼から夕暮れの入江へ響いていく鐘の音を景色に見立てたもので、金沢八景のひとつです。称名寺は鎌倉時代に北条実時が開いた金沢北条氏ゆかりの寺で、境内には浄土庭園の阿字ヶ池と朱塗りの反橋が整えられています。寺のまわりの海は埋め立てで遠のきましたが、鐘の音と夕暮れの境内の静けさは今も味わうことができます。
【歴史】
称名寺は、鎌倉幕府の重臣であった北条実時が六浦荘金沢の屋敷に営んだ持仏堂を起こりとする寺で、のちに金沢北条氏の菩提寺として大きく整えられました。実時が集めた書物を納めた金沢文庫も寺のかたわらに設けられ、いまは神奈川県立金沢文庫として受け継がれています。心越禅師の八景では、瀟湘八景の煙寺晩鐘にあたる題にこの寺の鐘が選ばれました。
【特徴】
晩鐘の題のもとになった梵鐘は、北条実時が文永六年にあたる1269年に鋳造させ、子の顕時が正安三年にあたる1301年に改めて鋳造したもので、国の重要文化財に指定されています。銘文には二度にわたる鋳造のいきさつが刻まれ、金沢北条氏の歩みを伝える史料にもなっています。目で見る景色ではなく、耳で聞く情景を選んだ点が称名晩鐘の特色です。
【見どころ】
赤門から仁王門をくぐると、阿字ヶ池に架かる反橋と平橋の向こうに金堂と釈迦堂が並ぶ浄土庭園が広がります。庭園は発掘調査の成果をもとに昭和の終わりごろに復元され、境内は称名寺境内として国の史跡に指定されています。夕方に池のほとりを歩けば晩鐘の情景を思い描けます。鐘をつく日時や拝観の決まりは変わることがあるので、前もって確かめてください。
【トリビア】
称名寺には、北条実時・顕時・貞顕・貞将の四代を描いた肖像画が伝わり、国宝に指定されています。寺宝の多くは隣の神奈川県立金沢文庫に預けられ、展示で目にする機会があります。京急本線の金沢文庫駅の名も、実時が開いたこの文庫に由来します。鐘の音を聞いた人々が見上げた寺は、八景の舞台であると同時に、中世の書物と美術を今に伝える宝庫でもあります。
