【概要】
信貴山縁起絵巻は、奈良県平群町にある朝護孫子寺に伝わる3巻の国宝絵巻で、この寺にこもった命蓮上人をめぐる霊験譚を描いています。空を舞う米倉や、祈祷で天皇の病を癒す場面が、勢いのある描線と豊かな表情で語られます。原本は奈良国立博物館に寄託されており、寺の霊宝館では精巧な複製を見ることができ、漫画の源流とも語られる作品です。
【歴史】
信貴山縁起絵巻は12世紀後半の平安時代後期に描かれたとみられ、筆者は分かっていません。奈良県平群町にある朝護孫子寺は聖徳太子の創建と伝わる毘沙門天の霊場で、絵巻はそこに住んだ命蓮上人の説話を題材にしています。詞書が少なく絵の比重が大きい構成から、絵を示しながら語り聞かせるために作られたとも考えられています。
【特徴】
3巻はそれぞれ山崎長者の巻、延喜加持の巻、尼公の巻と呼ばれ、いずれも縦は31.7センチ、長さは約8.8メートルから14.2メートルに及びます。とくに尼公の巻では、命蓮の姉が東大寺の大仏前で祈り、まどろみ、やがて信貴山へ向かうという時間の流れを一つの画面に描き込む異時同図法が用いられています。画面をたどるだけで物語の時間が動いていくのが分かります。
【見どころ】
第一巻の山崎長者の巻は詞書を持たず、托鉢の鉢に載った米倉が空へ舞い上がる場面から一気に展開します。驚いて追いすがる人々の身ぶりや表情が生き生きと描き分けられ、漫画の源流とも評されてきました。原本は奈良国立博物館に寄託されているため、目にできる機会は特別展などに限られる点に注意が必要です。訪ねる前に公開情報を確かめておくとよいでしょう。
【トリビア】
米倉が飛ぶ話は宇治拾遺物語にも収められており、同じ説話が絵と文の双方で伝えられてきたことが分かります。朝護孫子寺の霊宝館では原本ではなく精巧な複製が展示され、参拝のついでに場面を追うことができます。信貴山は張り子の寅でも知られ、境内には見上げるほど大きな寅の像が置かれており、毘沙門天の使いが寅とされることに由来しています。




