【概要】
佐治川石は、鳥取県の佐治川流域で産出される銘石。青黒く深みのある色合いと、変化に富んだ形状が特徴で、「水石(すいせき)」の世界では最高峰の一つとされる。雨に濡れると更に美しさが増し、庭石としても重宝される。
【歴史】
佐治川石は、鳥取県鳥取市を流れる佐治川で採れる水石の総称です。大正時代の中ごろ、地元の人がその美しさに着目して採集と紹介を始めたことから、比類のない銘石として全国に知られるようになったと伝わります。昭和三十年代の石ブームには県内外から採石に訪れる人が絶えず、保存会が設けられたものの無断採取はやまず、1965年には条例で本流での採取が全面禁止されました。
【特徴】
佐治川石は、三億年から一億六千万年ほど前に海底火山から噴き出た玄武岩質の溶岩や火砕岩が、地殻変動の強い圧力を受けて生まれた変成岩です。青黒い地の随所に緑泥石や緑簾石の結晶が緑色の斑をつくり、白い石英の脈が矢羽根のような筋を描きます。千本立と呼ばれる、ざらりと荒く刺すような石肌も、ほかの産地の石には見られない佐治川石ならではの持ち味とされ、鑑賞の第一の見どころに挙げられます。
【見どころ】
水石の世界では、色や姿のわずかな違いによって佐治川十石や佐治川七石と呼ばれる分類が伝えられ、真黒石や糸掛石といった名で愛好されてきました。鑑賞するときは、石の姿に遠山や滝、島の景色を重ね、水盤や台座に据えて静かに眺めます。触れるより眺める石といわれ、荒い肌には近寄りがたい気高ささえ漂うと評され、床の間や庭先に据えて四季の移ろいとともに味わうのが古くからの流儀です。
【トリビア】
佐治川石という呼び名は特定の岩石名ではなく、佐治川から産する水石の総称として使われている点が面白いところです。今日出回っているものは、採取が禁じられる以前に採られた石が愛好家の間で受け継がれてきたものにほかなりません。山あいの小さな里が銘石の産地として全国に名を知られてきたことは地元の誇りであり、川の名を冠した石が郷土の看板として大切に語り継がれています。




