【概要】
東京市は1889年の市制施行から1943年の東京都制施行まで存在した市で、その区域は今日の特別区、いわゆる二十三区にあたります。六大都市の筆頭として人口も経済も群を抜き、1898年に市制特例が撤廃されたのちは有楽町の府庁舎内に市役所が置かれました。その跡地には現在、東京国際フォーラムが建っています。
【歴史】
1889年の市制施行で誕生した東京市は、大阪市・京都市とともに市制特例が適用され、市長を置かず府知事がその職務を兼ねる官治的な体制で出発しました。自治権の拡大を求める運動がようやく実を結び、1898年10月に特例は撤廃されて独自の市長と市役所を持ちます。そして1922年、六大都市行政監督ニ関スル法律の対象となりました。
【特徴】
1920年の第一回国勢調査で東京市の人口は約217万人を数え、二位の大阪市を七割近く上回る突出した規模でした。日本橋や丸の内には銀行と商社の本店が集まり、霞が関の官庁街と結びついた政治・経済の中枢が形づくられます。1923年の関東大震災で市街の大半を焼失しますが、帝都復興事業によって幹線道路や橋梁、公園を備えた近代都市へ作り替えられました。
【見どころ】
六大都市だった東京市の面影をたどる手がかりは、東京都千代田区の東京国際フォーラムに残されています。この敷地には1894年、妻木頼黄の設計による赤煉瓦造の東京府庁舎が建ち、市制特例が撤廃されたあとの市役所もこの庁舎内に置かれました。1943年には初代の都庁舎となり、敷地の一角には東京府庁舎跡を示す碑が今も据えられています。
【トリビア】
東京市は1943年7月1日の東京都制施行によって東京府とともに廃止され、六大都市の一角がここで消えました。残る五市には五大都市行政監督特例が引き継がれ、呼び名も五大都市へと改まります。現在の二十三区は市ではなく特別区という独自の基礎自治体であり、東京市が復活したことは一度もありません。戦時下の行政一元化が生んだこの仕組みは、形を変えながら今日まで続いています。
