【概要】
室町時代に観阿弥・世阿弥親子によって大成された、日本最古の歌舞劇。仮面(能面)を用いる「能」と、対話を中心とした喜劇「狂言」からなる。必要最小限の動きで内面を表現する「幽玄」の世界観が特徴で、ユネスコ無形文化遺産に登録されている。
【歴史】
能楽(能・狂言)は、大陸から伝わった散楽が日本で猿楽へと形を変え、寺社の祭礼で演じられるなかから育っていった芸能です。奈良県奈良市にある興福寺や春日大社に奉仕した大和猿楽四座がその母体で、結崎座に属した観阿弥・世阿弥の父子が室町時代に芸術としての能を大成しました。永和元年(1375年)の今熊野での演能が将軍足利義満の目に留まり、飛躍の契機になったと伝わります。
【特徴】
能の舞台は、主役であるシテと相手役のワキ、笛や小鼓、大鼓、太鼓による囃子方、そして地謡によって構成されます。シテがつける能面は表情を固定しているように見えて、わずかな角度の変化で喜びや悲しみを豊かに映し出します。一方の狂言は面をほとんど用いず、話し言葉のやりとりで人の失敗や愚かさを笑いに変える喜劇であり、この二つが一体となって能楽と総称されています。
【楽しみ方】
能楽は、屋内の能楽堂での公演のほか、屋外で薪をたいて演じる薪能でも今なお広く親しまれています。なかでも春日大社と興福寺で五月に営まれる薪御能は、寺社の神事として演じられた能楽の源流をたどれる古い形式の行事として知られます。近年は字幕や解説つきの入門公演も数多く用意され、演目の筋を追いながら鑑賞できるため、はじめて能に触れる人でも入りやすくなっています。
【トリビア】
能楽は平成十三年(2001年)にユネスコの「人類の口承及び無形遺産の傑作」に宣言され、平成二十年には無形文化遺産の代表一覧表へ改めて記載されました。世阿弥が書き残した「風姿花伝」は芸の理論書でありながら人生論としても読み継がれ、「秘すれば花なり」の一節は今も広く引用されています。晩年の世阿弥は佐渡へ流されたと伝えられ、その足跡をたどる旅も人気を集めています。




