【概要】
明治屋は大阪府大阪市天王寺にある昭和13年創業の老舗居酒屋。再開発に伴い移転したが、ファンの要望により内装がそのまま移築・再現された。銅製の循環式燗付器やカウンターの絶妙な高さなど、随所に「居酒屋の美学」が感じられる大阪を代表する名店である。
【歴史】
明治屋は昭和13年(1938年)に大阪市天王寺区で創業した老舗居酒屋である。戦前から戦後にかけての激動の時代を乗り越え、大阪の下町文化を体現する酒場として長年愛されてきた。2012年の阿倍野再開発に伴い一時は閉店の危機に瀕したが、常連客やファンの強い要望により移転が実現。驚くべきことに、旧店舗の内装や設えがそのまま新店舗に移築・再現され、昭和の空気感がそのまま引き継がれた。太田和彦氏が「日本三大居酒屋」に選んだ名店である。
【特徴】
明治屋の特徴は随所に感じられる「居酒屋の美学」にある。カウンターと椅子の高さの絶妙なバランスは、酒を飲みながら最も楽な姿勢でくつろげるよう計算されている。銅製の循環式燗付器はいつでも適温の燗酒を提供するための職人の道具で、この燗付器から注がれる熱燗は格別の味わい。きずし(しめ鯖)やだし巻き玉子など大阪の定番酒肴が丁寧に作られ、一品一品に職人の矜持が感じられる。壁に並ぶ短冊メニューも昭和の風情そのもの。
【食べ方】
明治屋は天王寺駅・阿倍野駅から徒歩圏内にあり、あべのハルカスからも近い好立地。まずはビールか冷酒で喉を潤し、看板メニューのきずしとだし巻き玉子を注文するのが通の作法。燗付器で温められた日本酒は人肌燗からぬる燗が特におすすめで、大阪の地酒との相性も抜群。カウンターに座れば店主との会話も楽しめ、大阪人の温かいもてなしの心を感じられる。天王寺周辺には他にも名居酒屋が点在しており、ハシゴ酒も楽しい。
【トリビア】
明治屋の移転・再現は居酒屋文化の保存という観点からも画期的な出来事であった。旧店舗のカウンターや壁材、照明器具に至るまで丁寧に取り外して新店舗に移築するという手間とコストをかけた背景には、常連客やファンの「この空間を残してほしい」という強い思いがあった。銅製の燗付器は現在ではほとんど製造されておらず、明治屋のものは貴重な現役の道具。太田和彦氏は明治屋を「大阪の居酒屋文化の結晶」と評し、著書で何度も取り上げている。




