【概要】
浅草寺の北東に位置する浅草寺の子院です。大根と巾着がシンボルで、境内には至る所に大根の意匠が見られます。大根は身体健全や夫婦和合、巾着は商売繁盛や財宝を意味し、江戸時代から庶民の信仰を集めています。
【歴史】
待乳山聖天(本龍院)は、東京都台東区にある聖観音宗の寺院で、浅草寺の支院のひとつです。寺伝によれば推古天皇三年の九月、この地が一夜のうちに小高い山として湧き出し、そこへ金龍が舞い降りて山を守護したと伝わります。さらに推古天皇九年の夏、干ばつに苦しむ人々を救うため十一面観音の化身である大聖歓喜天が姿を現し、聖天さまとして祀られたとされています。
【特徴】
待乳山は標高十メートルほどの小さな丘ですが、隅田川の西岸に突き出したその姿は古くから名所として親しまれ、浮世絵にも数多く描かれてきました。境内で目を引くのが、交差した二本の大根と巾着をかたどった意匠です。大根は身体を清めて夫婦円満と子孫繁栄をもたらす象徴、巾着は商売繁盛と財宝を表すとされ、堂の扉や幕、灯籠など至るところにあしらわれています。
【見どころ】
参拝者は境内の授与所で大根を求め、本堂へ供えることができます。供えられた大根は聖天さまのお下がりとして翌日以降に参拝者へ授けられ、信仰が静かに循環する仕組みになっています。最もにぎわうのは一月七日の大般若講と大根まつりで、法要ののち正月に供えられた大根を炊いた風呂吹き大根が御神酒とともに振る舞われます。高台からは隅田川とスカイツリーを望めます。
【トリビア】
待乳山聖天の名は「まつちやま」と読み、古くは真土山や真乳山とも書かれてきました。江戸時代には隅田川を上り下りする船からの目印となり、行楽の名所として狂歌や川柳にもたびたび登場しています。境内には浅草に生まれた作家・池波正太郎の生誕地を示す記念碑も建ち、下町の文学と縁の深い場所でもあります。浅草寺の喧騒からわずかに離れた静けさが、この寺ならではの魅力です。




