【概要】
福岡県久留米市田主丸町は、江戸時代から続く日本有数の植木・苗木の産地。特に「久留米つつじ」の発祥地として有名で、色鮮やかな品種が多数生み出されている。筑後川の肥沃な土壌と気候に恵まれ、果樹苗の生産も非常に盛んである。
【歴史】
福岡県久留米市田主丸で植木と苗木の生産が始まったのは、元禄年間にあたる1700年前後と伝えられ、すでに300年を超える歴史を刻んできた。筑後川が運ぶ肥沃な土と温暖な気候が、樹木を育てるのに適していたからである。1742年には有馬藩が櫨の増殖を国策として奨励し、竹下武兵衛周直が栽培の技術をまとめた書物を著したという。文政期には今村喜左衛門が苗木業の元祖と称され、生産は周辺一帯へ広がっていった。
【特徴】
久留米市田主丸の強みは、庭木や緑化樹だけでなく果樹の苗を大量に手がける点にある。柑橘の苗木は全国シェアの八割を占めるとされ、明治期には松や杉、檜といった山林用の苗の生産も始まって、全国需要の相当な部分を担った。皐月つつじや牡丹の苗など品目は驚くほど幅広く、接ぎ木や実生の技術が家ごとに受け継がれている。昭和36年に発足した苗木交換会は、現在も植木市として毎月開かれている。
【見どころ】
町を歩くと、至るところで河童の像に出会うのが久留米市田主丸の面白さである。筑後川の流域に濃く残る河童伝説にちなむもので、水神の御神体まで含めるとその数は1000体に及ぶといわれ、JR久大本線の田主丸駅の駅舎までが河童をかたどっている。耳納山の麓には工房や柿園、酒蔵が点在する「山苞の道」が延び、植木畑の緑と合わせて、のんびりと散策を楽しむことができる。
【トリビア】
この町は巨峰の産地としての顔も併せ持っている。昭和30年に地元の農家の有志が九州理農研究所を立ち上げ、昭和32年に巨峰の苗200本を植え付けたところ、3年後に見事な実を結んだ。当時は全国に成功例のない挑戦であり、ここから巨峰の栽培が各地へ広まったため「巨峰開植の地」と呼ばれてきた。観光農園でぶどう狩りを楽しむ形も、この地で生まれたとされている。現在も多くの観光ぶどう園が軒を連ねている。




