【概要】
熊野大社は島根県松江市にある古社で、出雲大社とともに出雲国一宮に数えられ、『延喜式』の名神大社にも列した格式を伝えています。主祭神は素戔嗚尊と同じ神とされる櫛御気野命で、火をおこす神事にちなんで日本火出初之社とも称されます。意宇川のほとりに静かにたたずむ境内では、毎年秋に亀太夫神事で知られる鑽火祭が営まれます。
【歴史】
熊野大社は島根県松江市にある古社で、『出雲国風土記』に熊野大社と記され、『延喜式』では名神大社に列せられました。主祭神は伊邪那伎日真名子加夫呂伎熊野大神櫛御気野命で、素戔嗚尊と同じ神とされています。出雲大社とともに出雲国一宮に数えられ、旧社格は国幣大社でした。かつては山中に鎮座していたと伝わり、明治の末に上の宮と下の宮が現在の意宇川のほとりへ合わせ祀られています。
【特徴】
熊野大社は日本火出初之社と称され、火をおこす神事の道具を伝える火の発祥の社として知られています。境内は意宇川に架かる八雲橋を渡って進む構えで、随神門をくぐると檜皮葺の拝殿と本殿が姿を見せます。社殿は簡素でありながら厳かで、背後の山並みと川の流れが一体となった景観は、古代出雲の祭祀の場の面影をよく残しているといわれます。
【見どころ】
熊野大社で毎年十月十五日に営まれる鑽火祭は、出雲大社の宮司が古伝新嘗祭で神火をおこすための燧臼と燧杵を受け取りに訪れる神事です。その際、熊野大社の下級神職である亀太夫が、出雲大社側の持参した餅の色や形に口やかましく難をつけることから亀太夫神事と呼ばれ、全国でも例の少ない問答の神事として知られています。
【トリビア】
熊野大社の社名は紀伊の熊野三山との関係がしばしば語られ、出雲から紀伊へ伝わったとする説と、その逆を説く見方の双方があります。境内には稲田姫命を祀る稲田神社や、伊邪那美命を祀る伊邪那美神社が鎮座し、縁結びや安産の信仰も集めてきました。八雲立つ出雲の枕詞にちなむ地名が周囲に残り、意宇の地が古代出雲の中心であったことを物語ります。




