【概要】
コマドリ(駒鳥)は、初夏に標高の高い日本の亜高山帯の森に飛来するスズメほどの小さな夏鳥です。オスは顔から胸にかけてが鮮やかなオレンジ色(レンガ色)をしており、背中の暗緑褐色との対比が非常に美しい鳥です。「ヒン、カラカラカラ」と、馬(駒)が嘶(いなな)くような、独特の高音と連続音で力強く鳴くことから名付けられました。長野県の上高地など、深い笹藪や苔むした倒木がある冷涼な森で繁殖し、その声は野鳥ファンにとって「高山の初夏の象徴」として愛されています。非常に警戒心が強いため、姿を見ることは難しく、声を楽しむ鳥の代表です。
【生態と特徴】
コマドリは体長約14cmとスズメほどの小さな鳥です。涼しい気候を好み、標高1,000m以上の暗く湿った深い森(ササ藪や下草が密生する針葉樹林など)で繁殖します。オオルリが高い木の上で鳴くのとは対照的に、コマドリは地面に近い薮の中や倒木の上、苔むした岩の上などに隠れるように生息し、昆虫やクモなどを捕食します。警戒心が非常に強いため、美しい声は聞こえても姿を直接見ることはバードウォッチャーでも幸運と言われます。
【鳴き声(さえずり)】
コマドリの最大の特徴は、和名の由来にもなったそのさえずりです。「ヒン、カラカラカラカラ…」または「ツン、カラカラカラ…」と聞こえるその声は、前半の高音から急激に変化して巻き舌のような細かい連続音になるのが特徴で、これが馬(駒)のいななきに似ているとされました。静寂に包まれた深い森の中で、突然この大きく響き渡る美声を聞くと、とても神秘的な雰囲気を味わうことができます。
【観察のポイント】
観察(主に声を聴くこと)に適しているのは、5月から7月上旬にかけての上高地や富士山麓、四国山地などの高山地帯です。早朝、まだ薄暗い森の遊歩道などで立ち止まり、笹藪の中から聞こえてくる声に耳を澄ませます。鳴いている最中は、短い尾羽をピンと真上に立てて、体を震わせるように一生懸命にさえずる愛らしいポーズをとることが知られています。
【トリビア】
江戸時代には、その美しい鳴き声を楽しむために、「ウグイス」「オオルリ」「コマドリ」をカゴで飼育し、いかに美しくさえずらせるかを競う「鳴き合わせ」という趣味が、大名や裕福な商人の間で流行しました。(現在は野鳥の捕獲・飼育は法律で禁止されています)。西洋で美しい声で鳴く鳥といえば「ナイチンゲール」が有名ですが、コマドリはその声の美しさから「日本のナイチンゲール」と称賛されることもあります。




