【概要】
鳥取県岩美町の山あい、標高370メートルから400メートルに広がる唐川湿原に自生するカキツバタの群落で、1944年に国の天然記念物に指定されました。約100種の湿原植物が生育する湿原の下流部に群落が広がり、5月中旬から6月初旬にかけて紫の花が咲きます。山陰海岸ジオパークの見どころの一つです。
【歴史】
唐川湿原は岩美町の唐川集落の奥、周囲を山に囲まれた谷あいに形成された湿原で、集落の人々は古くからこの地を大切に守ってきました。カキツバタの群落は西日本を代表する自生地として学術的に高く評価され、1944年に国の天然記念物に指定されています。近年は日照不足やシカの食害で株が激減し、岩美町が長期計画を立てて周囲の樹木の伐採や土壌整備など再生に取り組んでいます。
【特徴】
湿原は東西約200メートル、南北約800メートルの広がりを持ち、標高370メートルから400メートルの谷間に位置します。約100種類の湿原植物が生育する中で、そのうち約0.6ヘクタールにカキツバタが群生し、見頃の5月中旬から6月初旬には涼しい山風の中で濃い紫の花が揺れます。ミズゴケやサギソウなど他の湿原植物も観察でき、山陰地方では珍しい湿原の生態系がまとまって残る場所です。
【見どころ】
岩美町の中心部から車で20分ほど山道を上ると、唐川の集落と湿原に着きます。開花期には湿原の脇に設けられた小道から花を眺められ、地元のいわみガイドクラブによる案内も行われます。周辺は山陰海岸ジオパークの一部で、湿原の成り立ちを地形とともに学べるのも魅力です。海沿いの浦富海岸や岩井温泉と組み合わせれば、山と海の両方の景観を一日で楽しむことができます。
【トリビア】
唐川のカキツバタは、京都や愛知の自生地と比べて花の色が濃いといわれ、山陰の冷涼な気候の中で育つためか小ぶりで引き締まった姿が特徴です。開花数は2021年の約1800本から2023年には約150本へと激減し、日照不足やシカの食害、地下水位の低下が原因とされます。指定80年を迎えた2024年から、町は湿原を囲む樹木の伐採と数年がかりの土壌整備に乗り出し、天然記念物の景観を取り戻そうとしています。
