【概要】
石山秋月は、石山寺の境内から瀬田川と琵琶湖の水面に映る秋の月を眺める景色で、近江八景のひとつに数えられます。眺めの場は東の尾根の先に建つ月見亭で、歌川広重の浮世絵にも堂の屋根と川筋と月とが一枚に収められました。紫式部が月影を見て物語の構想を得たという伝承も重なり、今も秋の名月の名所として親しまれています。
【歴史】
石山寺は天平十九年にあたる747年、聖武天皇の勅願を受けて良弁が開いたと伝わる古刹で、滋賀県大津市にある瀬田川ぞいの高台に堂を構えています。平安時代には都の貴族が石山詣に訪れ、月の名所としても知られました。月見亭は寺伝では保元年間に後白河天皇が行幸した際に建てられたのが始まりとされ、今の建物は貞享四年にあたる1687年の再建です。
【特徴】
石山秋月という題の値打ちは、月そのものよりも、月と水面と橋とがそろう構図にあるといわれてきました。月見亭は桁行一間、梁間一間という小さな吹きさらしの亭で、東寄りの部分は床を上げて舞台のようにしつらえてあります。そこに立つと瀬田川の流れと、その先に横たわる琵琶湖の南湖までを一度に見晴らすことができます。
【見どころ】
月見亭には今も立つことができ、瀬田川と対岸の家並み、遠くの山なみまで見渡せます。歌川広重は水面に月の光の帯を落とし、手前に硅灰石の岩肌と堂の屋根を置いて奥行きを出しました。境内では中秋のころに秋月祭が営まれ、夜の拝観とあわせて月を愛でる行事が続いています。日程や拝観の時間は年によって変わるので、前もって確かめてください。
【トリビア】
寛弘元年にあたる1004年、紫式部がこの寺に参籠し、湖面に映る十五夜の月を眺めて『源氏物語』の須磨と明石の巻の発想を得たという伝承が残ります。本堂の一角には紫式部源氏の間がしつらえられ、筆を執る姿の像が置かれています。ただし参籠を記した同時代の記録は見あたらず、後の世に育った物語と考えられています。




