【概要】
比良暮雪は、琵琶湖の西岸に連なる比良山地が夕暮れの雪をかぶって浮かびあがる景色で、近江八景のひとつです。八景のなかで唯一、遠くの山なみを眺める題であり、対岸や湖上から白い稜線を望む冬の情景は、いまもそのままに出会うことができます。最高峰は標高千二百十四メートルの武奈ヶ岳で、大部分が琵琶湖国定公園に含まれます。
【歴史】
比良の山は『万葉集』のころから歌に詠まれてきた土地で、石山寺の草創を語る縁起には、良弁を導いた老人が比良明神の化身であったという話も残ります。近衛信尹が撰んだとされる近江八景では、瀟湘八景の江天暮雪にあたる題として比良暮雪が置かれました。山ぞいの村は昔から冬の雪と強い風に向き合って暮らしてきた土地でもあります。
【特徴】
比良山地は南北におよそ二十キロ、東西におよそ十五キロの広がりをもつ山地で、東の比良断層と西の花折断層に挟まれてもち上がった地塁の山です。日本海側の気候の影響を強く受けて冬には雪が深く積もり、稜線では風が強くて樹木が育たないため、雪をかぶった白い山肌が、湖のむこう岸からもひと目ではっきりと見分けられます。
【見どころ】
最高峰の武奈ヶ岳は滋賀県大津市にある標高千二百十四メートルの山で、日本二百名山に選ばれています。稜線に立てば琵琶湖と京都の北山までを見晴らすことができます。南比良の打見山と蓬萊山にはびわ湖バレイの索道があり、雪の季節に湖を見下ろす眺めを味わえます。冬の登山は積雪と強風が厳しく、装備と天候の確認が欠かせません。
【トリビア】
比良山地から琵琶湖岸へ吹き降ろす強風を比良おろしと呼び、とくに春先に吹くものは比良八荒といいます。比良八講の荒れじまいという言い回しがあり、この風が収まると春が来るという目安にされてきました。矢橋の渡しが危ういといわれたのもこの風のためです。昭和二十五年には琵琶湖全体から選んだ琵琶湖八景も定められました。




