【概要】
富山県と長野県の県境、後立山連峰の五竜岳と鹿島槍ヶ岳を結ぶ険しい稜線上に位置する岩稜帯です。大キレットに次ぐ難易度を誇り、急峻な岩壁やナイフリッジが連続するスリリングな絶景ルートとして、熟練の登山者たちを魅了してやまない北アルプスの名所です。
【歴史】
後立山連峰を長大に南北へ縦走する上での最大の障壁として、古くから登山者の前に巨大な壁のごとく立ちはだかってきました。人を容易に寄せ付けない魔境でしたが、昭和初期の登山大ブームの折に命懸けのルートが開拓され、その後、鎖や足場となるハシゴが少しずつ長い年月をかけて整備されたことで、現在では充分な装備と高度な技術を持った一般の熟練登山者でも、死力を尽くして挑戦できる憧れの縦走路としての地位を確立するに至っています。
【特徴】
五竜岳から鹿島槍ヶ岳へと続くこの広大なキレットは、急激なアップダウンと極めて足場の悪い浮き石だらけの岩場が果てしなく連続する、体力的にも技術的にも厳しい難所です。特に鹿島槍ヶ岳側の斜面は非常に険しく、一歩足を踏み外せば谷底まで何百メートルも滑落し致命傷になりかねない、緊張感のまったく途切れない高度感抜群の恐ろしいルートが特徴であり、一瞬の油断も許されない極限の環境が長時間にわたって続きます。
【見どころ】
スリル満点の危険な岩場を歯を食いしばりながら乗り越えた先にようやく待っている、鹿島槍ヶ岳の美しくも雄大な双耳峰や、五竜岳の猛々しく堂々たる山容はまさに息を呑む大絶景です。また、キレットの最深部付近にある「八峰キレット小屋」は、こんな過酷な絶壁の環境にポツンと建っていること自体が奇跡と感じられるほど特異な光景であり、疲労困憊した登山者の心身を癒すオアシス的な存在として大きな感動を与えてくれます。
【トリビア】
キレット小屋の建設資材や日々の運営に必要な物資は、すべてヘリコプターに頼るのではなく、「強力(ごうりき)」と呼ばれる超人的な体力を持った歩荷(ぼっか)たちの人力によって、何十キロという重みを背負い危険な岩場を越えて運び上げられたという信じがたい歴史があります。現代の登山者が安全に休憩できる施設の背景には、先人たちの想像を絶する労力と山への計り知れない情熱が隠されているのです。




