【概要】
源氏物語絵巻は、紫式部の物語を平安時代末期に絵画化した現存最古の作例で、愛知県名古屋市東区にある徳川美術館と東京の五島美術館に分かれて伝わる国宝です。徳川美術館が絵15面と詞書28面、五島美術館が絵4面と詞書9面を所蔵しています。厚く塗り重ねた作り絵の彩色と、登場人物の内面をにじませる静かな画面が大きな魅力です。
【歴史】
源氏物語絵巻は12世紀前半の院政期に、複数の絵師と能書が分担して作り上げたと考えられています。長秋記に残る元永2年(1119年)の記事を制作の契機とみる説と、詞書の筆者を藤原教長として1150年頃とみる説があり、成立年代は今も定まっていません。江戸時代には尾張徳川家と阿波蜂須賀家に分かれて伝えられました。
【特徴】
画面は斜め上から見下ろす視点をとり、屋根と天井を取り払って室内を見せる吹抜屋台の手法で描かれています。人物の顔は細い線の目と鉤形の鼻でそろえる引目鉤鼻で表され、輪郭線の上から顔料を厚く塗り重ねる作り絵によって色そのものが感情を語ります。長押や几帳を左右斜めに配した構図も緊張感を生んでいます。選ばれた場面は華やかな見せ場ではなく、人物の心が揺れる静かな瞬間に偏っています。
【見どころ】
愛知県名古屋市東区にある徳川美術館が絵15面と詞書28面を、東京の五島美術館が絵4面と詞書9面を所蔵し、二館に分蔵されていることがこの絵巻の大きな特徴です。原本は光や湿度に弱いため通年で並ぶことはなく、公開は秋の展示や記念展など限られた期間に数面ずつというかたちが基本になっています。訪ねる前に開催中の展示内容を確かめておくと安心です。
【トリビア】
源氏物語を題材にした絵巻は近世まで数多く作られましたが、国宝に指定されているのはこの平安時代の源氏物語絵巻だけです。もとは長い巻物でしたが、保存のため昭和初期に場面ごとに切り離され、額装に改められました。近年は科学調査をもとにした復元模写が作られ、退色する前の鮮やかな色が知られるようになっています。現在は複製や図録で全場面を通して眺めることもできます。




