【概要】
三重県伊勢市、伊勢神宮の鬼門にあたる朝熊山の山頂近くに建つ臨済宗南禅寺派の寺院です。6世紀の創建と伝わり、825年に弘法大師が中興しました。本尊の福威智満虚空蔵大菩薩は日本三体虚空蔵尊の第一位とされ、「伊勢へ参らば朝熊をかけよ」と歌われた伊勢神宮の奥之院です。
【歴史】
朝熊岳金剛證寺は、6世紀に欽明天皇の勅願によって暁台上人が明星堂を建てたことに始まると伝わります。825年には弘法大師空海が真言密教の道場として中興し、その後衰退しますが、1392年に鎌倉建長寺の高僧・東岳文昱が再興して臨済宗に改めました。伊勢神宮の鬼門を守る寺として神宮との結びつきを深め、江戸時代には伊勢参りの旅人が必ず立ち寄る霊場となりました。
【特徴】
本尊は福威智満虚空蔵大菩薩で、日本三体虚空蔵尊の第一位に数えられる秘仏です。「伊勢へ参らば朝熊をかけよ、朝熊かけねば片参り」と伊勢音頭に歌われたように、神宮参拝と合わせて詣でることで願いが満ちるとされてきました。1609年に姫路城主・池田輝政が再建した本堂は桃山様式の重要文化財で、山門の仁王像や連間の池に架かる太鼓橋など、山上に広がる伽藍は荘厳です。
【見どころ】
伊勢志摩スカイラインの途中にある寺で、標高555メートルの朝熊山からは伊勢湾や志摩の海、天気が良ければ富士山まで見渡せます。奥之院へ続く参道には、亡き人の供養に建てられた高さ数メートルもの卒塔婆が林立し、伊勢地方特有の岳参りの風習を今に伝えています。境内の茶店で名物の草餅を味わい、山頂展望台で伊勢湾に沈む夕日を眺めるのがおすすめの巡り方です。
【トリビア】
本尊の虚空蔵菩薩は厳重な秘仏で、伊勢神宮の式年遷宮の翌年にあたる20年に一度しか開扉されません。また境内には、伊勢志摩に伝わる「おちんこ地蔵」や、朝熊山で採れる薬草を用いた伝統の胃薬・萬金丹の歴史など、独特の話題が多くあります。伊勢の人々はいまも身内を亡くすと朝熊山に卒塔婆を納める習わしを続けており、寺は今日も生きた信仰の場です。




