【概要】
天久宮は、沖縄県那覇市にある泊の崖地に鎮座する琉球八社の一社です。鳥居から参道の石段を下った先に社殿が構えられるという珍しい造りで、斜面の中腹には湧き水をたたえた小さな洞があります。貴婦人と僧が山から下りて洞に消え、熊野権現であると告げたという由緒を伝えており、熊野信仰を受け入れた琉球の社の一つです。
【歴史】
天久宮の創建は成化年間(1465年から1487年)と伝えられます。1713年の『琉球国由来記』には、銘苅村の翁子が、山から下りてくる気高い婦人と僧を見たという話が記されます。二人が消えた小さな洞から「我は熊野権現なり」との神託があり、婦人は弁財天であったとされ、王がこれを験して社を建てたといいます。別当寺は天久山聖現寺でした。
【特徴】
祭神は伊弉冉尊・速玉男尊・事解男尊の熊野三神です。天久宮の境内は崖の斜面を利用しており、鳥居から石段を下りて拝殿と本殿に至るという、神社としてはめずらしい上下の配置になっています。石段の脇には沖縄らしい姿の獅子が据えられ、斜面の中腹には湧き水の出る小さな洞が拝所として守られ、由緒を伝える場となっています。
【見どころ】
通りから境内へ入ると、視線より下に社殿の屋根が見えるという意外な眺めが広がります。石段を下りるにつれて周囲の音が遠のき、崖にいだかれた空間へ入っていく感覚があります。湧き水の拝所は由緒に語られる洞につながる場所とされ、天久宮の信仰が水と岩に結びついてきたことを今に伝えます。沖縄らしい獅子の姿も見どころです。
【トリビア】
天久宮の社殿は昭和十九年(1944年)の十・十空襲で失われました。戦後しばらくは建物を持たない御嶽の形で祀られ、本殿が再建されたのは昭和四十七年(1972年)のことです。旧暦の二月二十二日にあたる日に竣工したと伝えられます。戦前の社殿がそのまま残っているのではないことを知って訪ねると、境内の見え方が変わります。




