【概要】
法相宗大本山。天武天皇が皇后の病気平癒を祈って建立。解体修理を終えた国宝の東塔と、昭和・平成に復元された西塔や金堂などが美しい伽藍を見せる。「凍れる音楽」と称される東塔は必見。
【歴史】
薬師寺は、奈良県奈良市にある法相宗の大本山です。680年、天武天皇が皇后(のちの持統天皇)の病気平癒を祈って発願し、藤原京の地で造営が進められました。天武天皇の没後は持統天皇が事業を引き継いで本尊を開眼し、平城遷都に伴って718年ごろ現在の西ノ京へ移されたと考えられています。中世以降は火災が相次ぎ、東塔を除く多くの堂塔を失いました。境内は「古都奈良の文化財」として世界文化遺産に登録されています。
【特徴】
高さ約34メートルの東塔は創建以来の姿を保つ唯一の建物で、三重塔でありながら各層に裳階と呼ばれる小さな屋根が付くため、六重にも見える独特の姿をしています。大小の屋根が生み出すリズムは「凍れる音楽」と称えられてきました。2009年に始まった全面解体修理は2021年に落慶を迎え、薬師寺の伽藍は東西両塔がそろう姿を取り戻しています。西塔は1981年に、金堂は1976年に再建されたものです。
【見どころ】
金堂に安置される薬師三尊像は白鳳彫刻の最高傑作とされ、黒々と輝く銅の肌と、伸びやかで豊かな身体表現が見どころです。本尊が座す台座には、ギリシャ由来の葡萄唐草文やペルシャ風の蓮華文、中国の四神、インドの力神といった異国の意匠が刻まれており、シルクロードを渡って奈良にたどり着いた文化の広がりを雄弁に物語っています。脇侍である日光・月光菩薩立像の、腰をひねる姿態も見逃せません。
【トリビア】
1960年代に始まった伽藍復興は、管主の高田好胤が呼びかけた写経の勧進によって支えられました。一巻千円の納経を募ったところ全国から浄財が集まり、金堂や西塔、大講堂が次々と再建されたのです。朱と緑に彩られた西塔は創建当時の色彩を再現したもので、風雪を経て木肌をさらす東塔と並ぶ姿は、千三百年の時の流れを実感させます。写経の受付は今も続けられ、参拝者が筆を執る姿が見られます。




