【概要】
牛祭は、京都府京都市右京区にある広隆寺で営まれてきた奇祭です。摩多羅神に扮した者が牛にまたがり、四天王を従えて境内を巡り、独特の節回しで祭文を読み上げました。京都市の登録無形民俗文化財ですが、2000年代の初めを最後に長い休止が続いており、毎年の行事としては行われていません。復活を待つ声が今も残ります。
【歴史】
牛祭(広隆寺)は、平安時代の僧である源信が夢のお告げを受けて祭文を記し、インドに由来する摩多羅神を守護神として、五穀豊穣と国家の安泰を祈って始めたと伝えられます。もとは寺の境内にあった大酒神社の祭りとして営まれ、明治の神仏分離で神社が移ったのちも寺で続けられました。旧暦の九月に行われ、のちに十月十二日の夜に改まりました。
【特徴】
祭りの主役は、白い紙の面を着けた摩多羅神です。牛にまたがって現れ、赤鬼と青鬼の姿をした四天王を引き連れて境内を練り歩きます。やがて堂の前に進むと、独特の抑揚で長い祭文を読み上げ、これを見物の人々がやじり、囃し立てるのが習わしでした。読み終えると神と鬼が堂内へ一斉に駆け込み、祭りは幕を閉じたと伝えられます。
【見どころ】
この祭りは京都市の登録無形民俗文化財ですが、2000年代の初めに営まれたのを最後に長い休止が続いており、現在は毎年の行事としては行われていません。牛の手配や担い手の確保が難しくなったことが理由と伝えられます。そのため訪ねる際は、祭りの見物ではなく、京都府京都市右京区にある広隆寺そのものを拝観する形になります。
【トリビア】
面をかぶって現れる摩多羅神は、天台宗で密かに信仰されてきた謎の多い神で、その姿を今に伝える数少ない民俗行事として研究者からも注目されてきました。見物人が声を上げてやじるという作法も、他に例の少ない珍しいものです。なお広隆寺には国宝の指定第一号となった弥勒菩薩半跏思惟像が伝わり、こちらは今も通年で拝観できます。




