【概要】
徳島県のJR四国土讃線にある、四国を代表する秘境駅です。急峻な山岳地帯の深い谷底に位置しており、駅へ通じる車道はありません。また、この駅は全国でも珍しいスイッチバック式の構造を持つことで知られ、鉄道ファンの間で根強い人気を誇っています。
【歴史】
坪尻駅は徳島県三好市の山あいにある土讃線の駅で、1929年に信号場として設けられ、1950年に地元の要望を受けて旅客駅へ昇格しました。開業当初は周辺の集落の人々や木材の積み出しでにぎわった時期もありましたが、道路の整備と自動車の普及、そして過疎化が進むにつれて利用者は減り続けます。1970年には無人駅となり、現在のような静けさに包まれるようになりました。
【特徴】
坪尻駅は急な勾配を克服するために設けられたスイッチバック駅で、本線から分かれた線路を使い、列車が方向を変えながら出入りします。普通列車であっても停車せずに通過するものがあるため、訪れる機会は限られています。周囲には数えるほどの廃屋があるだけで、鬱蒼とした木々に囲まれた木造の小さな駅舎がぽつんとたたずむ姿は、深い郷愁と孤独感を誘います。
【見どころ】
入り組んだスイッチバックの線路配置や、運転士が進行方向を変えるために運転台を移り歩く様子など、鉄道好きにはたまらない光景を間近で見ることができます。駅舎そのものも昭和の面影を色濃くとどめており、板張りの待合室に置かれた駅ノートには、全国から訪れた旅人の言葉がびっしりと書き込まれています。ページをめくるだけでも旅情がこみ上げてきます。
【トリビア】
坪尻駅へ通じる車道はなく、外へ出るには険しい山道を歩くほかありません。最寄りの国道まで上がるにはおよそ二十分から三十分、急な斜面を登り続けることになります。周辺ではマムシが見られることもあるため、足元には十分な注意が必要です。列車を降り、次の列車が来るまでの時間を駅で過ごすこと自体を味わうのが、この駅ならではの旅の作法といえるでしょう。




