【概要】
仏師として飛鳥彫刻を主導した鞍作氏の氏寺で、『日本書紀』には606年に鞍作止利が推古天皇から賜った田を用いて建てたと記されています。渡来系氏族が開いた最古級の寺院と考えられ、持統天皇の時代には飛鳥五大寺の一つに数えられました。現在は建物が残らず、国の史跡「坂田寺跡」として田園のなかに跡をとどめています。
【歴史】
坂田寺は、奈良県明日香村にあった古代寺院で、現在は跡地を残すのみです。『扶桑略記』は522年に渡来した司馬達等が坂田原に草堂を結んだのを起源と伝え、『日本書紀』には606年、鞍作止利が推古天皇から賜った田を用いて金剛寺を建てたと記されています。この金剛寺が坂田寺にあたるとされ、渡来系氏族が開いた最古級の寺院と考えられています。寺跡は国の史跡「坂田寺跡」として保護されています。
【特徴】
仏師として飛鳥彫刻を主導した鞍作氏の氏寺であり、日本最初の尼僧とされる善信尼にゆかりの尼寺だったとも伝えられます。持統天皇の時代には大官大寺・飛鳥寺・川原寺・豊浦寺と並ぶ飛鳥五大寺の一つに数えられました。発掘調査では奈良時代の仏堂や回廊の跡が確認された一方、飛鳥時代の伽藍の姿はなお謎に包まれたままです。平安時代の記録にも名が見え、長く法灯が続いたことがうかがえます。
【見どころ】
坂田寺の跡地は現在、谷あいののどかな田園風景に包まれており、大きな建物は残っていません。石碑と説明板が静かに立つだけの場所ですが、北には石舞台古墳、南には稲渕の棚田が広がり、飛鳥を歩く人が通りかかる道筋にあたります。喧騒を離れて古代の面影を想像しながら散策するには、これ以上ない環境といえるでしょう。秋には稲渕の案山子や彼岸花が彩りを添え、歩く人を楽しませてくれます。
【トリビア】
発掘調査では、金堂と講堂の北東にあった土坑から、鏡や金箔、絹糸、銅銭、水晶玉といった鎮壇具が出土しました。建物の安全を祈って地中に納められた宝物で、この寺が有力氏族の寺として高い格式を備えていたことを示しています。「坂田寺」と墨書された土器も見つかっており、寺の名を裏づける貴重な資料となりました。出土品は明日香村の施設で公開されることがあり、実物を目にできます。




