【概要】
岡山県岡山市、大手饅頭伊部屋の銘菓。天保8年(1837年)創業。備前米から作る甘酒を練り込んだ生地で、北海道産小豆の漉し餡を薄く包み蒸し上げている。甘酒の芳醇な香りと、餡が透けて見えるほど薄い皮、そして滑らかな口当たりが特徴で、備前藩主も愛した味。
【歴史】
大手まんぢゅうは、天保8年(1837年)に岡山城の大手門近くで創業した大手饅頭伊部屋が作り続けている銘菓です。店を構えた場所にちなみ、当時の岡山藩第7代藩主・池田斉敏からその名を授かったと伝わり、以後も池田家歴代の藩主に愛好されました。備前を代表する土産菓子として、180年を超える歳月にわたり岡山の人々に親しまれ、藩政期から変わらぬ味を今に伝えています。
【特徴】
大手まんぢゅうの皮は、備前米から麹を起こして甘酒を仕込み、そこに小麦粉を混ぜて発酵させた酒饅頭の生地です。餡は北海道産の小豆を白双糖でじっくりと練り上げたこし餡で、これを極めて薄い皮で包んで蒸し上げます。表面のあちこちから餡の黒い色が透けて見えるほど皮が薄く、甘酒に由来するほのかな香りと、しっとりとなめらかな口当たりが身上で、上品な甘さが静かに広がります。
【食べ方】
大手まんぢゅうは、備前焼の茶器を用いた岡山藩の茶会で必ず供されたと伝わり、今も抹茶や煎茶と合わせるのが王道の味わい方です。1980年代からはひとつずつ巾着を思わせる紙包みに収められており、そのまま手に取っていただけます。岡山県岡山市にある京橋の本店のほか、岡山駅の売店や百貨店でも買えるので、岡山城や後楽園を訪ねる観光と合わせて土産に選ぶ人が多い一品です。
【トリビア】
岡山市出身の小説家・内田百閒は大手まんぢゅうを無類の大好物とし、随筆のなかでこの饅頭になら押しつぶされてもいいと書き残しています。製造工場は本店とは別に市内東部の雄町に置かれていますが、これは名水百選に選ばれた「雄町の冷泉」の水を製造に生かすためです。原料となる備前米から仕込み水に至るまでこだわり抜く姿勢が、創業当時と変わらない味を支え続けています。




