【概要】
奥津温泉は、岡山県鏡野町にある吉井川の上流にひらけた温泉地で、美作三湯のひとつです。江戸時代には津山藩の湯治場が置かれ、藩主が番人と鍵を付けて他の人の入浴を禁じたという「鍵湯」の伝えが残ります。アルカリ性単純温泉の湯は肌がなめらかになる美人の湯として知られ、川原では足踏み洗濯の情景が受け継がれてきました。
【歴史】
奥津温泉の開湯伝説では、国づくりの神である少彦名命が地方を巡る途中に湯を見つけたと伝えられます。江戸時代には津山藩の湯治場が設けられ、藩主が一般の利用を禁じて番人と鍵を付けたことから「鍵湯」の名が生まれました。1926年の大火で温泉街は焼けましたが再建され、1966年には国民保養温泉地に指定されています。
【特徴】
源泉の温度は三十五度から四十四度ほど、湧出量は毎分千リットル前後と伝えられるアルカリ性単純温泉で、湯上がりに肌がなめらかになる美人の湯として親しまれています。奥津温泉の宿の数は多くありませんが、浴槽の底から湯が湧き出す足元湧出の湯を守る宿があり、1927年に創業した奥津荘は国の登録有形文化財となっています。
【見どころ】
奥津温泉の名物は、吉井川の川原で行われてきた足踏み洗濯です。山から下りてくる熊や狼を警戒し、立ったまま周りを見張りながら足で衣類を洗ったのが始まりとされ、いまは観光客に向けた実演として受け継がれています。実演の日や時間は季節や川の様子で変わります。下流には国の名勝奥津渓が続き、秋は紅葉の名所となります。
【トリビア】
足踏み洗濯の情景は歌人の与謝野鉄幹が短歌に詠み、奥津温泉の名を世に広めました。奥津の湯が舞台とされる藤原審爾の小説を原作にした映画『秋津温泉』が1962年に公開され、全国に知られるきっかけにもなりました。下流の奥津渓の臼渕には、長い年月をかけて石が回り続けてできた直径五メートルほどの甌穴群が残されています。




