【概要】
室生寺は、奈良県宇陀市にある真言宗室生寺派の大本山で、室生川の渓谷から室生山の中腹へと伽藍が連なる山寺です。女人禁制だった高野山に対して女性の参詣を許したことから女人高野と呼ばれ、親しまれてきました。平安時代初期の五重塔や金堂、鎌倉時代の本堂がいずれも国宝に指定され、春には境内の石段を石楠花が彩ります。
【歴史】
室生寺の始まりは奈良時代の末で、東宮だった山部親王、のちの桓武天皇の病気平癒を願い、興福寺の僧の賢憬が室生山で祈祷を行ったことにさかのぼると伝わります。伽藍を本格的に整えたのは弟子の修円とされ、長く興福寺の法相宗と深く結びついた学問と修行の場でした。江戸時代に真言宗の寺となり、徳川綱吉の母の桂昌院の寄進を受けたことでも知られます。
【特徴】
奈良県宇陀市にある室生寺の境内は、朱塗りの太鼓橋で室生川を渡った先から始まり、山の斜面に沿って金堂、本堂、五重塔、奥の院へと段々に堂が配されています。古くから室生山は龍神が宿る聖地とされ、近くの室生龍穴神社とともに雨乞いの祈りが捧げられてきました。高野山が女性を拒んだ時代に女人高野として広く門を開いたことが、この寺の大きな個性です。
【見どころ】
鎧坂と呼ばれる自然石の石段を上ると、平安時代初期の金堂が現れます。堂内には榧の一木から彫られた国宝の釈迦如来立像と十一面観音菩薩立像が並び、衣のひだを大小の波のように刻む表現は室生寺様とも呼ばれます。さらに石段を上った先の五重塔は高さ約16メートルと小ぶりで、屋外の五重塔としては国内最小級です。春には石楠花が塔の足もとを埋めます。
【トリビア】
1998年の台風7号では、境内の杉の大木が五重塔に倒れかかり、屋根の一部が大きく壊れました。国内外から寄せられた寄付をもとに約2年をかけて修理され、いまの姿に戻っています。写真家の土門拳は昭和14年に初めて室生寺を訪れてから約40年にわたって通い続け、雪の五重塔をはじめ数多くの名作を残しました。室生寺は日本遺産「女性とともに今に息づく女人高野」の構成文化財にもなっています。
