【概要】
糊こぼしは、奈良県奈良市にある東大寺開山堂の庭に立つ椿の名木で、良弁僧正をまつる堂にちなんで良弁椿とも呼ばれます。紅色の花びらに白い斑が散り、糊をこぼしたように見えることが名の由来です。二月堂の修二会を飾る造花の椿はこの花を写したものと伝えられ、奈良三名椿の一つとして早春の東大寺を代表する花になっています。
【歴史】
開山堂は東大寺を開いた良弁僧正の像を安置する堂で、寛仁二年にあたる1018年に良弁の遠忌が営まれたのを機に建てられたと伝わります。いまの建物は内陣が正治二年の1200年、外陣が建長二年の1250年の建築で、南大門とともに重源が伝えた大仏様の数少ない遺構として国宝に指定されています。堂の前に立つ椿もこの由緒にちなみ、良弁椿と呼ばれてきました。
【特徴】
東大寺開山堂の糊こぼしは紅色の花に白い斑が入る椿で、紙細工をこしらえるときに糊をこぼしてしまったような模様に見えることから、その名がつけられました。開山堂は白い築地塀にぐるりと囲まれているため、花は塀越しに枝先を仰ぎ見るかたちになりますが、斑の入り方は一輪ごとに違い、同じ木でありながら表情の異なる花が咲きそろいます。
【見どころ】
見ごろは例年三月ごろで、二月堂の修二会が営まれる時期とちょうど重なります。修二会では練行衆が和紙を紅く染めて椿の造花をこしらえ、須弥壇のまわりを飾りますが、その花の姿はこの糊こぼしを写したものと伝えられています。奈良の菓子店には同じころ椿をかたどった生菓子が並び、花と行事と菓子が響き合う早春の風景をつくっています。
【トリビア】
開山堂の内陣に安置される木造良弁僧正坐像は国宝で、長く秘仏として厨子に納められてきたため、いまも彩色がよく残っています。開扉は良弁忌にあたる十二月十六日の一日だけで、椿の咲く春に堂内へ入ることはできません。拝観の可否や料金は年によって変わることがあるので、出かける前に東大寺の案内で確かめておくと安心です。




