【概要】
伊香保温泉は、群馬県渋川市にある温泉で、榛名山の東麓の斜面に石段街が伸びる姿で知られます。『万葉集』に伊香保の名を含む歌が残り、戦国期には負傷した兵の保養地として整えられたと伝えられます。茶褐色の硫酸塩泉「黄金の湯」と無色透明の「白銀の湯」という二つの湯を持ち、石段の下を源泉が流れて各旅館へ分けられる独特のしくみも見どころです。
【歴史】
伊香保の名は『万葉集』の歌に登場し、古くから知られた土地でした。現在の石段街は戦国時代の1576年ごろ、武田勝頼の命を受けた真田昌幸が長篠の戦いで傷ついた兵の保養地として整えたと伝えられ、湯を引く樋を軸に宿を並べたその町づくりは、日本で最も早い温泉町の都市計画とも言われます。明治以降は湯治場から観光地へと少しずつ姿を変えてきました。
【特徴】
伊香保温泉の湯は二種類あります。室町期に開かれたと伝わる「黄金の湯」は鉄分を含む硫酸塩泉で、湧き出たときは無色ながら空気に触れて茶褐色へ変わります。もう一つの「白銀の湯」はメタけい酸によって温泉と認められた無色透明の湯で、軽やかな肌ざわりです。性格の違う二つの湯を入り分けられるのが、この温泉地ならではの贅沢です。
【見どころ】
石段街は365段を数え、一年365日にぎわう温泉町であってほしいという願いが込められています。石段の下には黄金の湯の源泉が流れ、16の小間口から旅館へ湯が分けられてきました。上りきった先には伊香保神社が構え、さらに奥へ歩くと源泉地や朱塗りの河鹿橋があり、秋には紅葉が水面に映えてみごとな眺めになります。
【トリビア】
温泉まんじゅうの発祥は伊香保だとされ、1910年に石段街の勝月堂が黄金の湯の色にちなんだ茶色の皮で「湯の花まんじゅう」を売り出したのが始まりと伝えられます。石段街には徳冨蘆花や竹久夢二など多くの文人や画家が滞在して作品を残し、蘆花は小説『不如帰』の舞台に伊香保を選びました。石段には歌の一節を刻んだ詩碑もはめ込まれ、今も文学の香りが漂う温泉町です。




