【概要】
散り椿は、奈良県奈良市にある伝香寺の本堂前に咲く椿で、武士椿とも呼ばれます。花ごと落ちる椿が多いなかで、この木は花びらを一枚ずつ散らすことから散り椿の名がつきました。その潔い散りぎわを、若くして世を去った筒井順慶になぞらえたと伝えられ、東大寺の糊こぼし、白毫寺の五色椿とともに奈良三名椿に数えられています。
【歴史】
伝香寺は、鑑真の弟子である思託が奈良時代に開いた実円寺を前身とすると伝えられる寺です。天正十三年にあたる1585年、筒井順慶の母である芳秀尼が、三十六歳で世を去った息子の菩提を弔うために堂を建て直し、寺の名を伝香寺と改めました。いまに残る本堂はこのときに建てられたもので、国の重要文化財に指定されています。
【特徴】
伝香寺の散り椿は白い地に紅の絞りが入る花をつける椿で、境内に立つ木は芳秀尼が手植えしたと伝わる椿の三代目にあたるとされます。ふつうの椿が花の首からぽとりと落ちるのに対し、この木は桜のように花びらを一枚ずつ散らしていきます。その散りぎわの潔さを武士の生きざまになぞらえ、この木は武士椿という名でも呼ばれてきました。
【見どころ】
花の盛りは例年三月の下旬ごろで、本堂の前の地面に敷きつめられたようにして花びらが幾重にも重なる眺めが見どころになります。伝香寺はならまちの西寄り、小川町の街なかにあって、近鉄奈良駅やJR奈良駅から歩いて行ける立地です。東大寺開山堂の糊こぼしや白毫寺の五色椿とあわせて、一日で三つの椿をめぐる人も多く見られます。
【トリビア】
伝香寺には裸形につくられた地蔵菩薩立像が伝わり、はだか地蔵の名で親しまれています。像の内側に納められた品から嘉禄四年にあたる1228年の造立とわかる鎌倉時代の作で、国の重要文化財です。毎年七月二十三日の地蔵会では衣が新しく着せ替えられます。拝観の時間や志納金は変わることがあるため、訪ねる前に確かめておきましょう。




