【概要】
五色椿は、奈良県奈良市にある白毫寺の本堂前に立つ椿の古木で、奈良三名椿の一つに数えられます。紅・白・桃色を基調に、絞りや斑入りなどさまざまな花を一本の木から咲き分けるのが名の由来です。江戸時代の寛永年間に興福寺の塔頭から移し植えられたと伝えられ、樹齢はおよそ四百年とされ、奈良県の天然記念物に指定されています。
【歴史】
白毫寺は高円山の西の麓に建つ寺で、天智天皇の皇子である志貴皇子の山荘の跡に営まれたという伝承が残ります。鎌倉時代には西大寺の叡尊によって再興され、その弟子の道照が宋から一切経を伝えたことから一切経寺とも呼ばれました。境内の五色椿は、寛永年間に興福寺の塔頭であった喜多院から移し植えられたものと伝えられています。
【特徴】
白毫寺の五色椿は八重咲きの中輪の花をつける椿で、紅色一色の花、白い花、淡い桃色の花、紅の地に白い縦絞りの入る花などを、同じ一本の木から咲き分けます。五色という名はこの咲き分けの豊かさに由来するものです。樹高はおよそ五メートル、根まわりは一メートルほどにおよび、昭和三十二年に奈良県の天然記念物へ指定されました。
【見どころ】
花は例年三月の下旬ごろからほころびはじめ、四月のはじめにかけて盛りを迎えます。散った花びらが本堂前の地面をいろどる様子も美しく、古い石仏や石灯籠と重なる眺めは白毫寺ならではのものです。境内は奈良盆地を見晴らす高台にあり、長い石段を上りきったところで椿と眺望の両方を楽しめるのがこの寺の魅力になっています。
【トリビア】
白毫寺は秋の萩の名所としても知られ、参道の石段の両側をこぼれるように萩の花が覆う光景で親しまれています。宝蔵に納められた閻魔王坐像は鎌倉時代の作で国の重要文化財に指定されており、五色椿を見たあとにあわせて拝観する人も少なくありません。拝観の時間や拝観料は変わることがあるので、事前に確かめてから出かけましょう。




