【概要】
愛知県、特に瀬戸市周辺の丘陵地帯は、陶磁器(瀬戸焼)の原料となる良質な粘土や珪砂を含む地層が広がっている。古くから窯業が盛んであったため、燃料としての森林伐採や原料採掘により山が荒廃し、花崗岩が風化・浸食された独特の景観(通称「瀬戸のグランドキャニオン」など)が見られる。かつては県内の広範囲でハゲ山が見られたことから、日本三大ハゲ山県の一つに数えられる。現在は砂防工事や植林により緑化が進んでいる。
【歴史】
愛知県(瀬戸のグランドキャニオンなど)は、滋賀県・岡山県とともに日本三大ハゲ山県の一つに数えられてきました。尾張東部の丘陵地帯では瀬戸焼や常滑焼などの窯業が古くから盛んで、窯の燃料となる薪の伐採や陶土・珪砂の採掘によって山の植生が失われ、江戸時代から明治時代にかけて広大なはげ山が広がりました。第二次世界大戦中から戦後にかけても燃料不足で伐採が進み、荒廃が繰り返されたと伝わります。
【特徴】
この地域の地質は風化した花崗岩が砂状になった真砂土で、雨で崩れやすく養分にも乏しいため、一度失われた植生は自然には回復しにくいのが特徴です。1900年には瀬戸町で県による初の大規模なはげ山復旧工事が始まり、1905年にはオーストリアの林学者アメリゴ・ホフマンの指導で土堰堤や柳柵工を組み合わせた工事が行われました。この「ホフマン工事」は日本の治山技術の先駆けとされています。
【見どころ】
愛知県瀬戸市の東印所町には、ホフマン工事の跡が今も残り、復旧した緑の森の中で当時の堰堤を見学することができます。かつて陶土や珪砂の採掘によって白い岩肌が露出し、映画のロケ地にもなった「瀬戸のグランドキャニオン」と呼ばれる景観は、現在は立ち入りや眺望が制限されて往時の姿は見られません。尾張旭市から名古屋市にまたがる愛知県森林公園は、はげ山を緑化した成果の象徴といえる場所です。
【トリビア】
1900年の復旧工事の際には見学者が絶えなかったため、工事現場を見渡せる場所に萩を多く用いた休憩所が建てられ、「萩御殿」「萩の茶屋」と呼ばれて親しまれました。その名は瀬戸市の萩殿町という地名に今も残っています。また戦後の植林では痩せた土地でも育つアカマツやヒメヤシャブシが多用されたため、瀬戸周辺の森は人の手で再生された歴史を物語る樹種構成になっているといわれます。




