【概要】
阿武隈川から水を引く羽鳥疎水の完成により、かつての渇水地帯が肥沃な水田地帯へと生まれ変わりました。「水」との闘いを克服した歴史があり、現在では美味しいお米の産地として知られています。
【歴史】
福島県矢吹町にある矢吹ヶ原は、水に恵まれない火山灰台地で、明治以降も広い部分が手つかずの原野として残されてきました。1941年(昭和16年)に国営白河矢吹開拓建設事業が着手され、戦中戦後の混乱による中断を挟みながら1964年(昭和39年)に全事業が完了します。矢吹(矢吹ヶ原)は、旧農林省の『戦後開拓史』に成功例として記され、日本三大開拓地の一つに数えられるようになりました。
【特徴】
この事業の最大の特色は、分水嶺を越えて水を運ぶ大がかりな流域変更にあります。日本海側へ注ぐ阿賀野川水系の鶴沼川をせき止めて羽鳥ダムを築き、その水を太平洋側の阿武隈川水系にあたる矢吹ヶ原や白河方面へ導きました。ダムは七年の歳月と十一億円を投じて1956年(昭和31年)3月に完成し、およそ三千三百ヘクタールの農地を生み出しました。長い幹線用水路が台地をめぐり、原野の姿を一変させています。
【見どころ】
ダム湖である羽鳥湖は標高七百メートル近い高原に広がり、キャンプやゴルフ、冬のスキーが楽しめるリゾート地として親しまれています。町内では、あゆり沼を中心に整備された大池公園が約十九ヘクタールの広さを持ち、夏には水面を覆うハスが見頃を迎えます。園内には日本庭園や茶室もあり、崖に刻まれた三十三観音とあわせて訪ねたい名所です。湖畔へ向かう道中の高原風景も、気持ちのよい眺めが続きます。
【トリビア】
矢吹町は開拓の歴史にちなんで「フロンティア」を町のキャッチフレーズに掲げ、日本三大開拓地としての誇りを発信し続けています。同じ三大開拓地に数えられる十和田市、川南町とは交流事業を通じて長年の縁を結んできました。キジの飼育でも知られ、「きじの里」としてキジ肉を使った鍋や丼といった料理を味わえます。町内には開拓の記念碑や入植地の名を残す地区も点在しています。


