【概要】
岩手県盛岡市・花巻市を中心に伝わる郷土料理です。給仕が「はい、じゃんじゃん」という掛け声とともに、客のお椀に一口分のそばを次々と投げ入れる独特のスタイルで知られています。客が満腹になってお椀の蓋を閉めるまで続く、エンターテインメント性と「おもてなし」の心が詰まった食文化です。
【歴史】
わんこそばは、岩手県盛岡市を中心に、花巻一帯に伝わる郷土料理で、およそ四百年の歴史があると伝えられています。南部藩の二十七代当主・南部利直が江戸へ向かう途中に花巻城へ立ち寄った際、名産のそばを塗り椀に一口分だけ盛って差し出したところ、殿様が何杯もおかわりをしたという逸話が起源とされます。岩手の方言で小さなものに「コ」を付ける習わしから、椀コそばが転じてわんこそばと呼ばれるようになったと伝わります。
【特徴】
わんこそばの最大の特徴は、給仕役が「はい、じゃんじゃん」などの掛け声とともに、客の椀へ一口分ずつのそばを次々と入れていく給仕のスタイルにあります。麺はあらかじめ茹でて水で締めた細めのそばで、一口で食べ切れる量に整えられています。客が満腹になって椀の蓋を閉めるまで給仕は続き、食べる速さに合わせて間合いを計る呼吸に、東北のもてなしの心があらわれています。
【食べ方】
食べ方は、椀に入ったそばを薬味やつゆとともに一気にすすり、空になった椀をそのまま差し出すのが基本です。満腹になったら椀の蓋を素早く閉めるのが終了の合図になります。十五杯ほどでもりそば一杯分に相当するといわれ、一般的な目安は三十杯から五十杯ほどとされています。刻みねぎ、なめこおろし、まぐろの刺身、とろろなど多彩な薬味が添えられ、途中で味を変えながら食べ進めるのが飽きずに続けるこつです。
【トリビア】
わんこそばは、盛岡冷麺、盛岡じゃじゃ麺と並ぶ盛岡三大麺の一つに数えられています。花巻市では昭和三十二年に始まった「わんこそば全日本大会」が毎年二月十一日に開かれ、制限時間内に食べた杯数を競います。相撲になぞらえて出場者を食士、優勝者を横綱と呼ぶのも大会ならではの趣向です。老舗の料理店では予約をすれば通年で体験でき、百杯達成の証明書を渡す店もあります。
