【概要】
松花堂昭乗は、天正12年(1584年)ごろに生まれた石清水八幡宮の社僧で、男山の瀧本坊の住職を務めました。書は大師流を深く学んで松花堂流と呼ばれる柔らかな書風を築き、絵や茶の湯にも通じた文化人として知られます。晩年に営んだ草庵の松花堂は明治時代に男山から現在の地へ移され、京都府八幡市の松花堂庭園で庭とともに守られています。
【歴史】
松花堂昭乗は慶長5年(1600年)、石清水八幡宮の瀧本坊で実乗のもとに出家しました。のちに瀧本坊の住職となり、真言密教の阿闍梨の位にも進んでいます。寛永14年(1637年)には住職を乗淳に譲り、瀧本坊の南東にあった泉坊に移って草庵を建て、松花堂と名づけて晩年を過ごしました。寛永16年(1639年)に亡くなるまで、この庵で書画や茶の湯に親しんだと伝わります。
【特徴】
青蓮院流から書を学び始めた昭乗は、20歳のころに四天王寺で空海の筆と伝わる巻物を拝観したことをきっかけに、大師流へ進んだとされます。やがて和様を基調とした柔らかく品のある松花堂流を確立し、その書は江戸時代を通じて手本として広く親しまれました。絵では墨の濃淡を生かした水墨画を得意とし、小堀遠州や沢庵ら当代の文化人とも交流を重ねています。
【見どころ】
京都府八幡市にある松花堂庭園は、明治時代に男山から移された草庵の松花堂と泉坊書院を中心とする庭園で、国の史跡と名勝に指定されています。茶室を配した庭には多くの種類の竹や椿が植えられ、四季の移ろいを感じながら散策できます。草庵のある内園は修理のため見学できない時期があるため、訪れる前に公開の状況を確かめておくと安心です。
【トリビア】
料亭の弁当でおなじみの松花堂弁当は、昭乗にちなんで名づけられたものです。昭乗が農家の種入れにならった十字の仕切りのある箱を、絵の具入れや煙草盆として愛用していたと伝わり、昭和の初めに吉兆の創業者の湯木貞一がこの箱に料理を盛ったのが始まりとされます。田の字に区切られた器は、松花堂の名とともに今も和食の定番として広く使われています。
