【概要】
島根県出雲地方の郷土料理です。そばの実を甘皮ごと挽く「挽きぐるみ」のそば粉を使用するため、色が黒く香りが強いのが特徴です。朱塗りの丸い器を三段に重ねた「割子(わりご)そば」や、茹で汁(そば湯)ごとお椀に入れて食べる「釜揚げそば」という独特の食べ方で親しまれています。
【歴史】
出雲そばは、島根県東部の出雲地方に伝わる郷土そばです。寛永十五年(一六三八年)、信濃の松本藩から松江藩へ国替えとなった藩主・松平直政が、そば職人を伴って移り住んだことが広まる契機になったと伝えられています。以後、松江藩では茶の湯の文化とともにそばが親しまれ、やがて庶民の間にも定着しました。二〇二二年には直政の転封にちなみ、二月十一日が出雲そばの日に制定されています。
【特徴】
出雲そばの特徴は、そばの実を殻ごと石臼で挽く挽きぐるみの粉を用いる点にあります。甘皮や殻の成分が混ざるため麺は黒みを帯び、香りが強く、噛むほどに素朴な風味が広がります。実の中心だけを使う白いそばとは対照的な、力強い味わいです。つゆも濃いめに仕立てられ、麺に負けない味付けが基本です。器や食べ方にも独自の作法が受け継がれ、日本三大蕎麦の一つとして全国に知られています。
【食べ方】
食べ方は、冷たい割子そばと温かい釜揚げそばの二通りが代表的です。どちらも麺につゆを直接かける食べ方が基本で、そば猪口は使いません。割子そばは朱塗りの丸い器を三段に重ね、薬味とつゆをかけて食べ、残ったつゆを次の段へ移して食べ進めます。釜揚げそばは茹でた麺を水で締めず、そば湯ごと器に盛るもので、とろみのある湯の甘みと香りをそのまま味わえます。薬味は刻みねぎや大根おろしなどが定番です。
【トリビア】
割子という名は、もともと野外へ持ち出す割子弁当の器に由来し、四角い重箱から現在の丸い器へと形を変えてきたと伝えられています。重ねたまま運べる便利さが、参拝や行楽の場に合っていたとされます。釜揚げそばは旧暦十月の神在祭のころに屋台で振る舞われたのが始まりとされ、島根県出雲市にある出雲大社の門前には今も老舗の店が軒を連ね、参拝と合わせた食べ歩きも人気です。
