【概要】
「日本一の急登」の一つと称される、谷川岳の登竜門的ルート。森林限界が低いため、比較的低い標高からアルペン的な岩場が続き、高度感と展望を楽しめますが、滑落事故も多いため注意が必要です。
【歴史】
谷川岳(西黒尾根)は、群馬県みなかみ町にある双耳峰へ、麓から山頂まで自分の足だけで登り詰める伝統的なルートです。ロープウェイが通じる以前はこの尾根が主要な登路であり、数えきれないほどの登山者が汗を流してきました。標高800メートルほどの登山口からトマノ耳まで一息に登り上げる勾配の強さから、黒戸尾根やブナ立尾根と並ぶ日本三大急登の一つに数えられています。
【特徴】
谷川岳の頂はトマノ耳(1963メートル)とオキノ耳(1977メートル)の二つに分かれています。標高こそ2000メートルに届きませんが、日本有数の豪雪地帯であるため森林限界が低く、早い段階から岩稜帯に出るのが西黒尾根の特色です。鎖場が連なるラクダの背の周辺では、露出した蛇紋岩の岩肌が濡れると著しく滑るため、慎重な足の置き方と落ち着いた判断が欠かせません。
【見どころ】
樹林帯を抜けると一気に視界が開け、眼下には湯檜曽川の深い谷、正面には一ノ倉沢やマチガ沢の巨大な岩壁が迫ります。雪と水に削られて切り立ったこれらの壁は日本を代表する岩場として知られ、国内外のクライマーの憧れの的となってきました。高山植物の咲く初夏から草紅葉に染まる秋まで表情は移ろい、標高の割に高山らしい景観を長い期間にわたって楽しめるのが、西黒尾根の大きな魅力です。
【トリビア】
谷川岳は遭難で命を落とした人の数が世界一多い山としてギネス世界記録に登録されており、その数はこれまでに800人を超えるとされます。険しい岩場と変わりやすい天候、そして首都圏から日帰りできてしまう手軽さが重なった結果とされ、「魔の山」という異名もここに由来します。西黒尾根も上級者向けのルートとされ、登山届の提出と入念な装備の準備が繰り返し呼びかけられています。

