【概要】
兵庫県丹波篠山市周辺を発祥とする、日本最古の歴史を持つ杜氏集団の一つです。日本一の酒処「灘五郷」の酒造りを支えてきました。硬水である「宮水」を使いこなし、力強くコクのある「男酒」を醸す技術に長けています。その卓越した技術は「丹波流」として知られています。
【歴史】
丹波杜氏は、兵庫県丹波篠山市を中心とする丹波の地から生まれた杜氏集団です。酒どころの伊丹や池田まで一日足らずで行ける立地から、江戸時代には冬の酒造出稼ぎが盛んになり、元禄期に江戸で人気を集めた伊丹の銘酒も彼らの手によって生み出されました。やがて江戸時代の中期以降は灘五郷へと働き場を移し、江戸へ運ばれる下り酒の隆盛を技術の面から支え続けました。丹波の男たちが灘の酒を支えた構図は、明治以降も長く続きました。
【特徴】
丹波杜氏の技を象徴するのが、灘の酒を仕込む「宮水」との付き合い方です。ミネラルを多く含む硬水は発酵が勢いよく進むため制御が難しいのですが、丹波流はこれを乗りこなし、腰の強い辛口の酒を醸してきました。道具を徹底して洗う「秋洗い」に始まる衛生管理の厳しさも受け継がれ、手間のかかる生酛造りの担い手としても知られています。灘の酒が「男酒」と呼ばれるのは、この水と技の組み合わせによるものです。
【見どころ】
兵庫県丹波篠山市にある丹波杜氏酒造記念館では、丹波杜氏の歩みを資料と映像でたどり、実際に使われた酒造用具を間近に見ることができます。昭和35年(1960年)に杜氏会館として建てられ、平成元年(1989年)に建て替えられた建物で、杜氏たちが作業の拍子をとるために歌った「秋洗い唄」や「酛摺り唄」などの酒造り唄も紹介されており、近くの酒蔵をたずねれば、その技が今も生きていることが分かります。
【トリビア】
時計のない時代、酒造りの作業時間は唄の節で測られていました。丹波杜氏が歌い継いだ酒造り唄は、櫂を入れる回数や洗いの手順を体に覚え込ませる実用の道具でもあったのです。こうした手仕事の積み重ねが評価され、令和6年(2024年)12月には日本の「伝統的酒造り」がユネスコの無形文化遺産に登録されました。唄の節回しは流派ごとに異なり、いまも記念館でその声を聴くことができます。
