【概要】
岩手県花巻市石鳥谷町を拠点とする、日本最大規模の杜氏集団です。誠実で粘り強い「南部」の人柄が生み出す酒は、淡麗でありながらも味に幅があるのが特徴です。明治時代以降、勢力を拡大し、全国各地の酒蔵で活躍しています。現在は「南部杜氏協会」が技術の継承と向上に努めています。
【歴史】
南部杜氏は、旧南部藩領にあたる岩手県花巻市を中心に受け継がれてきた酒造りの職人集団です。慶長11年(1606年)ごろ、藩の御用商人が上方の大量仕込みの技術を領内へ伝え、延宝6年(1678年)には近江商人の村井権兵衛が紫波の地で酒造りを始め、上方から蔵人を招いたことが源流と伝わります。以来、雪に閉ざされる冬の出稼ぎとして、酒造りの技が地域に根づいていきました。
【特徴】
南部杜氏の身上は、寒冷な気候を生かした低温長期発酵にあります。低い温度でゆっくりと醪を育てることで雑菌の繁殖を抑え、香り高く、それでいて味に幅のある酒に仕上げます。大正3年(1914年)に南部杜氏組合として組織化され、昭和23年(1948年)に南部杜氏協会と改称しました。組合員は全国各地の蔵へ出向いており、いまも日本最大規模の杜氏集団として知られています。
【見どころ】
岩手県花巻市にある道の駅「石鳥谷」は「南部杜氏の里」と名づけられ、敷地内の南部杜氏伝承館では、古い酒蔵の土蔵を移築復元した建物の中に、直径二メートルほどの仕込み桶をはじめとする酒造用具が並びます。映像で酒造りの工程も学べ、毎年六月ごろの「南部杜氏の里まつり」では、自醸清酒鑑評会に出品された酒の飲み比べも楽しめます。道の駅には利き酒のできる売店もあり、土産選びを兼ねて立ち寄る人も多い場所です。
【トリビア】
南部杜氏の組合員は昭和40年(1965年)の四千人余りをピークに減少が続いており、設備の機械化や社員による酒造りの広がりが背景にあると言われます。それでも南部杜氏の技を求める蔵は各地にあり、全国の鑑評会で受賞者を出し続けています。なお「杜氏」の語源には、家事を司る主婦を指す「家刀自」に由来し、古代の酒造りが女性の手に委ねられていた名残だとする説もあります。
