【概要】
1887年に設立された日本初の官立高等商業学校。キャプテン・オブ・インダストリー(産業界の指導者)の育成を掲げ、日本の商学研究と実業界の発展を牽引しました。現在の国立市にあるキャンパスは、ロマネスク様式の建築群でも知られます。
【歴史】
東京高等商業学校(現・一橋大学)の始まりは、1875年に森有礼が東京の銀座に私費で開いた商法講習所にさかのぼります。1884年に国へ移管されて東京商業学校となり、1887年には日本で唯一の高等商業学校に改組されました。1902年に神戸へ二校目が置かれたのに伴って東京高等商業学校と改称し、1920年には日本初の商科大学である東京商科大学へと昇格し、日本三高商の筆頭と称されました。
【特徴】
創立以来「キャプテン・オブ・インダストリー」、すなわち産業界を率いる指導者の育成を掲げ、簿記や貿易実務といった実学を体系立てて教えた点が東京高等商業学校の身上でした。少人数のゼミナールを教育の柱に据えた方式は、当時としては先駆的な試みで、全国に相次いで設けられた高等商業学校の手本となりました。卒業生は商社や銀行、製造業の中核を担い、日本の近代経済を支えました。
【見どころ】
関東大震災を機に校地は都心を離れ、1927年から東京都国立市への移転が進められました。現在の国立キャンパスに残る兼松講堂は、建築家・伊東忠太の設計により1927年に完成したロマネスク様式の建物で、2000年に国の登録有形文化財に登録されました。柱や外壁には伊東が好んだ怪獣の彫刻が配され、駅から続く大学通りの桜並木とともに、地域の人々にも長く親しまれています。
【トリビア】
1908年から翌年にかけて、政府が高等商業学校を東京帝国大学に併合しようとした際には、学生と卒業生が総退学をもって抗議した「申酉事件」が起こりました。渋沢栄一らの調停によって事態は収まり、この一件が独立した商科大学への道を開いたとも語り継がれています。同窓会「如水会」の名も、『礼記』の「君子の交わりは淡きこと水の如し」に由来し、1914年に発足したと伝わります。
